土神と狐@中ノ沢美術館

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土神と狐 再再演 @中ノ沢美術館(赤城山)

小林裕児(絵画・ライブペインティング)広田淳一(演出)内田慈(女優)齋藤徹(音楽)の3回目は、山深き中ノ沢美術館で行われました。

賢治さんのこの作品にはドイツ由来のコトバがたくさん出てきます。曰く、望遠鏡を独逸のツァイスに注文していたり、ハイネの詩集、ロウレライ、黄金の秋などなど。賢治さんの舞台は独逸の森に似合います。決してフランスやイタリアではありません。ゴーシュの金星オーケストラも注文の多い料理店も独逸の森にこそ似合います。

4〜5月、デュッセルドルフでライン川沿いを何回か散歩しました。近くの有名なケーキ屋にはロウレライの日本語の訳が書いてある商品がありました。恐ろしい物語であるロウレライを今回は慈さんに歌詞付きで歌ってもらいました。曰く「くすしき魔歌(まがうた)うたうロウレライ」。魔歌に引き寄せられるように物語は展開します。勧善懲悪では有り得ません。

実際に森に住む裕児さんが言うには、人の手が入っている境の森、が舞台になる。なるほど。人の手が入っている自然こそ素晴らしいというちょっと聞くと自然主義に反するようなことも実際はあるわけです。森が森として成り立つのは、人の手が入っている場合が多いとのこと。宮本常一さんもそのようなことを言っていた記憶があります。理想の夢見るお花畑ではないわけです。田畑も、肥料成分を考えてこそ豊饒としてくる。雑草を刈ってこそ実がたわわに実る。

NPO法人20年という希有な美術館である中ノ沢美術館に到着する少し手前にあるのが、「クローネンベルク」というドイツ村だったのでした。まさしく今回の出し物を演じるには最高の状況です。

再再演にまでなったきっかけはいくつかありますが、初演の1週間程前に慈さんが一念発起して、この物語を暗誦してきたことがありました。もともと「演じ語り」という形式で行けば良いかと始まった企画でしたが、慈さんが覚えてきたことで状況は一変しました。脚本として書かれていない物語を暗誦することは大変ムズカシイ。土神、狐、樺の木という登場人物の語りわけにプラスして、もう一人のキャラクターを広田さんは設定してきていました。

慈さんの情熱に引っ張られて企画が進み、再演、再再演、(11月には4回目も予定)と進んできたのです。こういう展開は好きです。必要以上のエネルギーが次の芽に繋げていく、思いも見なかった世界が展開するのです。必要最低限の関わり方では決して起こりません。こうやって物事は創造的に繋がるのでしょう。全てのことに当てはまる気がします。

前日入りして、1回半通し稽古、皆が森に刺激されて、「攻め」の方向に進みました。良い感じです。近くに一泊して翌日に臨みます。

暑いくらい快晴。会場には、朱色以降、緑が基調の大作4点が並びます。壮観です。「浸水の森」「よみがえりの木」「地底湖」「谷間にて」。地底湖の上に見える地上、それと似た形をした中ノ沢美術館のペンタゴン。いやがうえにも想像力が刺激されます。

予想を遙かに越える90名近い人々が集まってきています。凄いエネルギーが集まります。前回、裕児さんのライブペインティング(劇が始まる前に舞台美術を描いてしまうという趣向)では、演劇の中身と関係の薄いバッハの無伴奏1番・2番とやりましたが、今回は、重なっても良いから、ペインティングと密に関係していこうと決めました。裕児さんの集中力と聴衆の集中力に乗せられるように目一杯演奏しました。(スタッフの話によると、途中でトイレに行く人が皆無という稀に見る状況だったとのこと)

裕児さんの絵では大変珍しい「横向き」互い違いの土神と狐でした。最初に地べたにあらわれた土神の眼を観た時ゾッとしました。なぜか砂沢ビッキさんの土の中で朽ちていくトーテムポールを思い浮かべました。

舞台美術が出来、慈さんにボディペインティングを施しました。これがまさしく入れ墨のようでした。模様がちょっとアイヌの紋様に似て、さらにアニミスティックな雰囲気が溢れます。

慈さんもトップギアでぶっ飛ばします。常連の方が何回観ても泣いてしまうと言うエンディングのカタチも決まり、凄惨な物語も、森の中へ戻すことによって、寓話に戻して私たちも聴衆も日常に戻りました。

ありがとうございました!と全方位に向かってお礼を言って帰りましたとさ。

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