デヴィッドとのデュオ

忘れないうちに、アリバイを書いて置きましょう。

David Chiesa デュオ@アケタの店(10月4日)
ナンシー、トゥールーズなどでデイビッドと会ってから、もうかれこれ7~8年たつ。
大きな身体、スキンヘッド、フランス人なのにジャーマン弓奏法など目に付く。笑顔がどことなくミッシェル・ドネダに似ている。

ともかく活動的だ。じっとしていることは苦手なのだ。家だって2軒作ってしまったという。その内一軒が最近売れたそうだ。いくつものプロジェクトを並行して実践している。その1つが日本関連。動いて、動いて、動いて、動いて、スポンサーを見つけ、滞在先を見つけ、共同実現者を見つけ、実際に多くの国を股にかける。今回は写真家とのプロジェクトと日本でのプロジェクトを合体させている模様。

一時期は定住せずに、ずっと移動をしていたそうだ。ベースノマド。現代はロマでなく、即興演奏家こそが、ノマドなのかもしれない。移動すること、新たな文化や人々との出会いが音楽の健康を保ち、持続させていくチカラになっているのかもしれない。

ひっきりなしに動くには、コントラバスはとてもやっかいだ。しかしロマの人たちもコントラバスを大きさゆえに捨てることはしなかった。耳の痛い人たちがいるだろう。

今回持参したのは、カーボン・ファイバー製の真っ黒な5弦ベース。トゥーロンにあるCOSIというメーカーのもの。トゥーロンはバール・フィリップスの住むプジョー・ビルの近くにある。そのためもあり、バールがずいぶんとアドバイスをした。

私も試作段階から知っている。もともとは飛行機の胴体などを製造していた会社。カーボン・ファイバーは軽くて丈夫。フランス政府の後押しもあって、この業種の勢いがあった。とりわけ、水でカーボン・ファイバーを裁断する技術を得てから一気に進んだ。超高速の水でカーボン・ファイバーを切ってしまうのだ。熱がかからないので、裁断面の構造に変化がない。「固いカーボン・ファイバーだけでなく、ほら、こんなペラペラなゴムの平面でも加工ができる」といって紙切り職人のような技を、社長のラガルディさんが見せてくれた。

私も一時モニターとして日本で使っていたことがある。なにしろ丈夫で、軽い。沖縄に持って行ったときは本当に役立った。まさにうってつけ。どんな潮風でも、湿気、スコールでも平気。また、ある録音エンジニアにすこぶる評判が良かった。というのは、音が平均していて粒が揃っている。安心して録音できるというのだ。

確かに、ジャズ楽団で主にバッキングをするには、良いだろう。しかし、私のような活動では、音の粒が揃いすぎているのは、かえって良くない。一つ一つの音が全く性格の違う兄弟のようだとうれしい。いつもあまのじゃく、素直になれない。

さて、デヴィッドとのデュオは、全部即興で2部にわけそれぞれ30分強。10月なのにずいぶんと湿気のある日で、体調不良で悪い汗がでた。彼は、自分の全てを投げ出してしまって、何が起こるかを楽しむ冒険というよりも、確実に自分の技術で反応して行く。外見とはちょっと違う、堅実な路線。とんでもないことにはならないが、確実にあるレベルはキープする。そんな印象。瀬尾高志さん、吉野弘志さん、原田依幸さん、バーバー富士の松本さんも聴きに来てくれた。久しぶりのアケタでした。

デヴィッドさん、これからもいろいろな旅をして、人に、自然に逢い、プロジェクトを展開して、音が変化していくことを。ボン・ヴォヤッジ!

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