orbit with今井和雄

ORBITと言えばplan Bです。というわけで、plan BでORBITをやります。これは思い入れ満載の林檎の苗木企画🍎です。

https://www.facebook.com/events/408796583017088/

音楽演奏において、テクニックとは何だろう?いつもつきまとうトピックです。

今井和雄さんは高柳昌行さんのギター練習課程を2回卒業したという伝説をもちます。1回卒業した人さえ皆無なのに2回卒業。音楽シーンで大活躍しているギタリストでも半分も終えることができなかったという内容なのだそうです。ピックでヴィラ・ロボスを弾いちゃうとかもあるそう。おっ魂消た。

「テクニック」としては最高難度なのでしょう。しかし音楽演奏はテクニックとは別物です。画家の小林裕児さんをワークショップにお招きしたとき「私は絵のテクニックがあってほんとうに困った。これを捨てるのに十年以上かかったのですよ」とおっしゃいました。

ピカソの殴り書き、アール・ブリュッの絵、など合わせて考えましょう。このごろ私がよく言っているように「表したもの」は「表さなかったもの」「表せなかったもの」との総体として表現になる、ということ。

フリーインプロで、イレギュラーな奏法で演奏するとき、初心者も50年やっている人がも同じような音をだしたとしましょう。それは「同じ」ですが、決して「同じではない」のです。表さなかったものの質と量が全く違う訳です。

先日ワークショップに来ていただいた沢井一恵さんが、ちょっとだけですが、スティックで十七絃を叩きました。それは、叩かない、叩きたくない沢井一恵が膨大に存在するからスゲー表現になるのです。初心者が叩いても同じような音が出ますが、全く違うわけです。そういえば、かつて私の所に「ベースを叩くのがカッコイイから、それを教えてください」という美大生が来ましたね。

沢井一恵さんとのセッションで最後にゲストで矢萩竜太郎さん(ダウン症のダンサー)が参加しました。あるシーンで、7弦琴(正倉院の復元楽器)を演奏していた一恵さん。主の居なくなった十七絃はいかにも寂しそうでした。矢萩竜太郎さんが踊りながらポーン、ポーンと弾いたのです。

その音がとっても無垢で美しい音でした。その音に魅せられた一恵さんはずっと聴いていました。私にも経験がありました。劇団態変とアスベスト館のワークショップの時、私が持ち込んだ韓国の銅鑼を態変の人が叩いたとき今まで聴いたことの無いスバラシイ音でした。サインソング(聾のための歌)の公演の時、舞台にあったピアノをポロンポロンと聾の人が弾くとなんとも素晴らしい音だったのです。

一方、聾の女優さんに「あなたの思う歌を歌ってください」と頼んだときの「歌」は劇場を凍らせました。

「駱駝の涙」での馬頭琴の風に震えた音。何気ない松籟。箏の一番の音も風に吹かれた音(一恵)。

この楽器はこういう音、こういう音が良い音、という考えに捉えられてない人は囚われの無い音を出すです。

その音、絵に達するためには、無垢にならなければなりません。とても難しい。それは技術をただ捨てるということとは違い、技術をこれ以上無いまで高めることと全部捨てることを同時に行うことなのでしょう。ジャン・デュビュッフェはアール・ブリュを真似することという綱渡りをしました。彼にはそれをさせる動機と時間を使っています。

話を戻しましょう。今井和雄さんのギターはまさにそういうギターなのです。最高難度の技術を持っているからこそのノイズであり、イレギュラー奏法なのです。もちろん良く気をつけて聴いていればレギュラーな奏法が基本であることは分かります。

私とのデュオORBITでは、かれはナイロン弦ギター(ふつうガットギターとまちがって呼ばれています)だけ、PAもアンプもつかいません。私も同様。(私はガットベース)

「Orbit 0」のライナーにはこんなことを書きました。
「何で、こんなことになっちまったのだろう?
貴重な楽器や弓を手に入れて、弦もピックも松脂も諸パーツも厳選して、イヤって言うほど練習をして、イヤって言うほどの世界中の音楽を聴いて、いろいろな所に旅して、家族ももってさ、余裕のないくらしをして、「この音」だぜ。「普通の」音なんかほとんどありゃしない。誰だってできるんじゃない?
ありったけの自分を担保にして、1時間、音を出し続ける。そこまでして欲しいものがそこにあるの?答えは”YES” 完全アコースティック、完全即興、1時間キッカリ、合わせて110年の軌跡(齋藤徹)」

和雄・徹のデュオの他にミッシェル・ドネダ、レ・クアン・ニン、沢井一恵を加えたグループ「影の時 une chance pour O’mble 」カナダ・ヴィクトリアヴィルフェスティバルで初演。7年前のミッシェル、ニン来日の時も、エッグファームで「影の時」の演奏があり、一昨年退院後2日目に同エッグファームで「影の時」再演には、奇跡的に参加しました。(もう伝説の域ですね〜。)今回は、2人合わせて126歳。

2人のORBIT(軌跡)は曼荼羅のようにうねりますが、2019年4月19日にplan Bで再び衝突します。いったい何回やったろう?

林檎の苗木企画🍎としては感慨無量。

https://www.facebook.com/events/408796583017088/