
いずるばフェス備忘録(忘れないうちに) その4
第4場
冒頭で登場した諏訪洋子さんと竜太郎さんのデュオ。パスカル・キニャールの「めぐり逢う朝」のサント・コロンブとマラン・マレの対話が朗読されます。キニャール氏は自らもビオラ・ダ・ガンバ奏者、つい先日来日し、長崎大学でも講演したそうです。音楽を深く愛するがゆえにアウシュビッツでも演奏される音楽とは一体何なのだ?と「音楽への憎しみ」を書き、「音楽のレッスン」を書き、「めぐり逢う朝」を書きました。「ダンスの起源」という本も近日中に翻訳が出るようです。これも楽しみです。「めぐり逢う朝」は今昔物語集の蝉丸の章の換骨奪胎。源博雅朝臣が琵琶の秘曲(啄木・流泉)を蝉丸の所に3年通い詰めた後にようやく習うという逸話を見事にヨーロッパの風土に移し替えました。アラン・コルノー監督の映画によって広く世に知られ、音楽は何のために?というストーリーに集約されました。
啄木も流泉もネットで拾って聴くと、現代の耳には単純な音楽に聞こえます。啄木は撥で琵琶をコツコツ叩き、流泉は水の流れを模したようなのですから現代奏法や即興のようにも聞こえます。しかし、この単純さこそが珍しかった、秘曲だったのかもしれない、というのも新たな気づきになります。
「言葉で語ることのできないものを語るのが音楽です。・・・誠の音楽は耳には語らぬ。・・・・沈黙は言葉の裏側でしかない。・・・愛に? 違う。愛の悔恨に?違う 自棄に? 死者への贈り物と? 言葉なき者達へのささやかな慰めと? ・・・・世に出ることの亡かった胎児たちに捧げるものと。」
洋子さんと竜太郎さんは長年の師弟関係です。長い間には、いろいろなことがあったことでしょう。
私が竜太郎さんを知るようになった10年前、彼の集中力は5分が限界でした。いまや1時間を越えてインスピレーション豊かに踊り続けるのです。あっぱれです。
この対話朗読(村上・早川)でも実践されたように、どちらが問いどちらが答えるのかだんだんと分からなくなるということをここで2人が踊りました。問いは答えとなり、答えは問いとなり、答えのない問いになり、問いのない答えに変容する。それをじっと見守る一弦琴のコロスが二人を暖かく囲み、朗読終了後、一弦琴を置くと蓮の花のようになりました。
木村由さんのアイディアにより、遠くで取り囲んでいたコロスが樹・林になります。しかしこの木々は微かに動きます。植物は動かないことを選択した、植物は何も殺さずに生きることのできる唯一の生物という話が好きです。ヨーロッパ中世の最大の女性幻視者と呼ばれるヒルデガルド・フォン・ビンケンも思い起こします。薬草はなぜヒトに効くクスリや毒をつくるのか?ヒトにはなぜ「ツボ」があるのか?植物の性と動物の性は変わらないのか?
蓮の花を飛び出した竜太郎さんが木々と話合い、触れあいます。風媒花の風に見えました。風は神の意志を伝える鳥。
ワークショップで「海のリズム」と言っていたリズムが微かに聞こえます。下手な考え休むに似たり。命の源である海に身を任せ、月の光をたよりにして、乾千恵さんのコトバによる「舟唄」で行こう、遠く、遠く遠く遠くのリフレインの中、カーテンコール。旅の終わりは旅のはじまり。疲れ果てて倒れたまぶたの先に新芽が見えてくるはずさ。
「悲しみと わが身ひとつ
積み込んで いざ ゆこう
大波 風 嵐 あまた越え
闇と望み抱え 漕ぎ出そう
ゆこう 遠く 遠く 遠く 遠く 遠く 遠く」
音楽は考えるためでもあり、考えないためでもある。ダンスも美術も文学も然り。かな?
今回特に浮き上がってきたトピックは「ことば」と「即興」でした。
街から書店が消え、書店から詩集が消えて久しくなりました。
ご飯論法や東大話法が話題になる。
巷の流行歌にはほとんど詩を感じることができない。
「ま〜い〜ちゃん、あそびましょ!」の音程は決して間違えることはない日本語は骨に染みている。
即興の対義語は作品・振付ではなく、常識・自分自身だということ。
良い時の自分を繰り返してはならない。
コピーは必ず劣化する。
コピーは必ず時間やインスピレーションを奪う。
それは自分にとって、他者にとって罪。
クリエイトとアレンジは天と地ほど違う。
ヒトはどうして効果を求めてしまうのか?
効果の影にコピーが透けて見える。
それにストップをかけることができるのは何?
身体・自然に聴く?
生産労働から逃れられないのか?
そのヒントに祝祭があるのか?
その時、音楽やダンス・文学・美術の役割は?
癌告知から始めたワークショップ、オープンリハーサルの2年間。
総まとめになりました。
同じ事・1つのことしか言っていないのでしょう。
1つのことが言えれば上等上等。
2018年師走の東京であと3つ大きな仕事があります。
14日第Q藝術(成城学園前)現代詩人の詩に曲を付け(12曲)松本泰子さんが歌い庄﨑隆志さんが舞う。
15日ポレポレ坐(東中野)徹と徹の部屋vol.3 岩下徹さんとの即興デュオ3回目 1時間1本。バッハ5番。
20日ムジカーザ(代々木上原)螺鈿隊コンサートにて沢井一恵さんとゲストでストーンアウト全曲演奏。
普段でもとんでもないスケジュールです。
必ずお土産を両手にどっさり持って乗り越えます。
そして必ずパスを回します。
このためにずっっっっとやって来たのだから。
へこたれてどうする?徹っちゃん。スマイル。
