主作用と詩

私の抗がん剤治療による副作用(side effects)は、もはや主作用(main effects)です。なにしろあんな巨大な患部を小さくして手術可能にしてくれたのですから、癌より強いわけです。ありがたいことです。

しかし残念ながら、副作用に対する調査・研究があまり進んでいないようです。私の担当医をはじめ第一線で活躍している医師は、分単位の診療・半日かかる手術・日々更新される世界の論文読み・学会発表・出張が続いています。それはそれは多忙を極めていて、担当患者に対しては患部を取り除いたり、治療することが何を差し置いてもまず求められてそれを全うしています。自然と頭が下がります。

私を始め、そういう医師達の努力のおかげで、生き延びた人は数知れません。その中で副作用に悩む日々を過ごしている方も多いのではないかと推察します。戸塚洋二氏の「ガンと闘った科学者の記録」(文春文庫)でも、科学者としての視点から、患者による詳細な経過の統計の必要性を説き、製作を始めていましたが、私の知るところでは未だできていないと思います。

そんな時、患者によるいくつかのインターネットサイトを訪れます。そこには何年かかって痺れが取れた、動かしたり歩いた方が良いのか等の投稿があり、貴重な情報そして希望となっています。(数で言えば大変少なく、成功例が主ですが。)

私としては、このまま悪化すると楽器を弾けなくなるかもしれないという悪い予想、日に日に増していく不具合に対する気持ちのキープの参考になっているのです。楽器が弾けなければ作曲でも良い、教えるのでも良い、文章だって良い、さらには生きていさえすれば良いという覚悟が、あの時確かにできていましたが、よたよたながら演奏ができると欲がでてきてしまいます。

ま、ケセラセラです。ダメならその時考えましょ。

ダメなときはなんとしてもダメなことは経験上重々わかっております。
大切なツアーもキャンセルしたし。

来週からの過酷スケジュールの前に、小休止の現在、ジャン宅で持参した詩集を開き、作曲に相務めております。メロディを付けるべくあれこれ曲想を練っていると、詩人の熟度、言葉の純度などが眼に見えるようでこれはこれで楽しい。そんな時は身体の不具合を忘れています。Let’s enjoy life. 8月3日(金)かっぱ橋なってるハウスでの松本泰子さんとのDUOで麗しの5月のドイツの香りを付けて?お披露目したいと思います。

#JF