「いずるば」ワークショップ ゲスト庄﨑隆志さん 終了

「いずるば」ワークショップ:ゲスト庄﨑隆志 終了

またまたゲスト回はすばらしい時間でした。つくづく私は友人に恵まれていると実感します。

やはり、というか、毎度お馴染みの副作用がこのところの寒さで酷くなっていますが、もう慣れっこ・通常。関係各所・各人に甘えて迎えることになりました。

「弱さが大事なんだ」、タルコフスキー「ストーカー」の中で私にとって最も印象的な示唆でした。

ジャン・サスポータスさんとやってきている自閉症プロジェクト・タンツテアター「私の城」。2年前の初演時、ドイツのミュージシャンとのリハーサルが上手く進まず、私も焦ったり、困ったりしてついに初演直前に入院してしまいました。思えば私を含めみんなが自分の意見・権利を主張し、事の是々非々をうんぬんかんぬんしていました。

ところが昨年は、私が癌を患い、抗がん剤治療予定の都合を付けてドイツへ行き、参加。(近所の散歩も出来ない状態でしたが。)

当然、再びいろいろな確執があるだろうな、と想定し、覚悟して行きました。ところが、私の病状を知っている「おかげ」さまか、出演者全員の「気」がひとつになり、すばらしい共同制作をすることができたのです。みんなが進んで協力し合い、補い合い、かつ、クリエイティブになれました。

いろいろな教えがありました。「私の城」のアドバイザーの自閉症を専門に研究している医師・研究者の話によると、集団に自閉症などのハンディキャップの人が入ると、集団の雰囲気が良くなり、結果的に集団の業績・成果が上がる、という研究・統計がでているとのこと。そういうことが「私の城」再演で起きたのか、と推測しました。インクルーシブの成果。

また、当たり前のこと、常識を疑う、立ち止まってみる、自分の居場所を客観視することと関連するようにも思います。それは「即興」と同じです。厳しい現実や困難に直面したときになんとか切り抜ける知恵として、よりよく生きるための方法としての「即興」・「弱さのチカラ」を思います。両者は、近いところにあるのですね。

強さを競い、効果を競い、優劣を競うこと(演奏でも作品でも)が多少のカタルシスを得るだけで、結局その場しのぎにすぎないこと、足を引っ張り合い、己の地位を保とうとすることが空しさしかもたらさないこと、損得だけではないだろうという最後の願い、そういう所から考えると合点がいきます。

対談では庄﨑さんのさまざまな体験を聞くことができ貴重なインタビューになりました。また、竜太郎さんにも何回も登場してもらいました。庄﨑さんの竜太郎観は大変興味深かったです。「のびのびとして元気あふれてすばらしい」というなんの変哲もない普通の褒め言葉のようですが、村上さんが「翻訳」してくれたように、「のびのび」と言うのは、遠慮無く、ということにもなります。周囲に気を配りながら、遠慮無く、ということは、矛盾するようですが、舞台上では(そして人生でも)矛盾せずに存在しうるということなのです。根を持つことと羽根を持つことができる。それを竜太郎さんは示しているという視座。

思えば、矛盾しないことなどこの世に存在していないのかもしれません。すべては矛盾の中から生まれてきて、矛盾の中で育ち、矛盾の中で死んでいくのかもしれません。(エネルギー生成が解糖系とミトコンドリア系という相反する二つによって成り立っているという生命の宿命ゆえ、というとちょっと衒学的すぎるか・・・)

そんな、シンプルで奥深いことを思わせてくれる大変貴重な時間でした。

ありがとうございました!