さとうじゅんこ座長公演

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さとうじゅんこ座長公演が近づいてきました。
私が「菩薩」と呼ぶじゅんこさんのうたはポジティブな歓びに溢れています。
「天使」竜太郎さんのダンスも肯定感にあふれ希望を与えてくれます。
人はなぜうたうのか、おどるのか、一瞬で納得させてくれます。
準備もここに来て、さまざまなキーワードが連鎖して、ある世界が形を表しつつあるようです。

ポジティブな歓びや希望は何に支えられているか?

楽しいだけじゃないし、憂さを晴らしてくれるだけじゃない。それためだけなら他のもっと楽な方法がたくさんあります。ギリギリのせめぎ合いだからこそ得られる逆転。

白川静説の漢字「歌」の意味からパウル・ツェラン作「テネブレ」へ導かれ、この詩を矢萩竜太郎さんの即興ダンスの時に朗読しようかという案が上がっています。(これは Sebastian Gramss とのDouble the double bass in Japanでの小林裕児さんとのセッションでツェランの「コロナ」を朗読したこととも連鎖しています。)

テネブレは「暗闇」の意味。「闇」という漢字に「音」が使われています。白川説によると、神にお伺いを立てて夜中に神から応答がある、それが「おとづれ」。音と闇は切っても切れない関係にあるのですね。音は神の応答を「待つ」ことで、「サウンド」そのものではない。音が終わった後の沈黙を深めるための道具とも言えるのか・・・

「暗闇の聖務」Officium Tenebrae F・クープランの作曲をアラン・コルノー監督「めぐり逢う朝」で使っていました。(音楽:Jordi Savall )歌っていたのが故Montserrat Figuerasさんでした。蝋燭を1本ずつ消していき、暗闇になる儀式の時の音楽です。神戸ルミナリエも、明かりが全部消える時に阪神淡路大震災の鎮魂・追悼を行うというのが本来の趣旨だそうです。ジェズアルド作曲のテネブレをヒリアードアンサンブルが録音もしています。Officium オフィチウムもヒリアードアンサンブルとヤン・ガルバレクが録音していて、両方共ECM盤です。ECMの制作コンセプトはThe Most Beautiful Sound Next To Silence。直毅さんも私もガット弦使用です。

亡き妻マリア・バルバラに捧げたという説を元にした「シャコンヌ」のバージョンも今回演奏しますが、そのきっかけになったのがヒリアードアンサンブルとクリストフ・ポッペンのECM盤でした。

「めぐり逢う朝」の原作 パスカル・キニャールは今昔物語「蝉丸」の章より換骨奪胎しながら主人公サント・コロンブと功成り名を遂げたマラン・マレとの最後の対話でこう言わせています。

言葉で語ることのできないものを語るのが音楽です。
だから俗世のものではない。王のものではない。
では、神のものですか?
違うなぜなら神は語られるからだ。
耳に?
誠の音楽は耳には語らぬ。
では金に?栄光に?沈黙に?
沈黙は言葉の裏側でしかない。
他の楽師達に?
違う。
愛に?
違う。
愛の悔恨に?
違う
自棄に?
あの供え物に?
それも違う だが供え物とは?
わかった 例の菓子か あれは何でもない。
わかりません。
わからぬ。
死者への贈り物と?
そのとおりだ。
言葉なき者達へのささやかな慰めと?
子供らの影に
靴屋の槌の音を和らげるものに
世に出ることの亡かった胎児たちに捧げるものと。
先ほどあなたは私の嘆きを聞いたはずだ。
遠からず私は死に曲も消滅する
それを悲しむものもおらぬ。
死者を呼び起こすその曲をあなたに託したい。

 

2014年12月24日私たちはどこから来てどこへ行くのでしょう?

徹の部屋vol.34
今日は私の日:さとうじゅんこ編
⚫︎日時:2014年12月24日(水)19:30スタート
⚫︎出演:うたをさがしてトリオ
齋藤徹、喜多直毅、さとうじゅんこ
⚫︎ゲスト:熊坂路得子、矢萩竜太郎
⚫︎スペイン語協力:高際裕哉
⚫︎会場:ポレポレ坐(東中野)
⚫︎料金:予約3,000円、当日3,500円(ワンドリンク付き)
⚫︎ご予約:ポレポレタイムス社03-3227-1405
event@polepoletimes.jp

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