うたをさがして2 終了

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ポレポレ坐「徹の部屋vol.14 うたをさがして2」終了しました。東工大の学生さんから、お能の人間国宝の方、多くの美術の方々、ワールドミュージックの館で共演する峰万里恵さん・高場将美さん、ジャンさん体操に来ていた方、さまざまなあたたかな客席でした。ありがとうございました。
当日配布したプログラムノートです。↓
ご挨拶
本日は、ご来場ありがとうございました。
前回「徹の部屋vol.13 ベースの森の中で」(4月16日)、来日できずにSkypeで参加したジャン・サスポータスさんが今日はここにいます。その時に「いつの日にか本当の平和になって、いや平和を創り、改めてポレポレ坐に生ジャンさんを迎えましょう。」と告知をしました。残念ながら原発は収束にむけた出発点にも至っていませんし、政治は多くの人達の願いを取り上げていません。平和とは言えません。が、ジャンさんはここで踊ります。そして「徹の部屋vol.12 うたをさがして」のトリオ(さとうじゅんこ・喜多直毅・徹)と共演します。ポレポレ坐の後、2回演奏をして良い感じになってきています。ジャンさんとこのトリオ、こんな時代に生まれ合わせてしまった同時代者として、ご来場のみなさまと一緒に「うた」をさがしたいと思います。
演奏予定曲
第一部
テオ・アンゲロプロスの映画より。
台詞は池澤夏樹さん訳。どうしても収まらないところは最低限ですが編集しました。曲は齋藤徹のオリジナル。
1.河の始まり :エレニの旅より。夢の中で河の始まりを探しに行こうという若い二人と案内の老人。「手が葉に触れ、水滴がしたたった。地に降る涙のように。」歌と演奏が交互に演奏を繰り返し、河の始まりを知った喜びの円舞を踊ります。
2.クセニティス:永遠と1日より。ギリシャ実在の詩人ディオニソス・ソロモスが母国に帰り革命賛歌を書こうとしたが、「母の言葉が分からない」そこで歩き回り、聞いた言葉を書き留め、知らない言葉には金を払った。「詩人が言葉を買うぞ」という噂が広まる。クセニティスとは「何処にいてもよそ者」と言う意味。テオ・アンゲロプロスがしばしば扱う考え方。リディアンのメロディのまにまに印象的な言葉が立ち現れるという方法をとりました。
3.今日は私の日:永遠と一日より。主人公アレクサンドレの妻アンナが一途に愛を求めますが、どうしても届きません。切ない気持ちを歌い,踊ります。「私はただの恋する女、踊りましょう、踊るのが嫌いでも、だって今日は私の日。」5拍子のアルゼンチンサンバから草原のミロンガで踊ります。
4.コルフーラ・私の花:永遠と一日より。アルバニアから越境してきたストリートチルドレンとアレクサンドレのロードムービーのように話は進みます。その中で口をきかなかった少年が時々口ずさむ歌がありました。「国を追われた私の小鳥は 見知らぬ土地で哀しかろう」「林檎を送ったら腐った、マルメロを送ったらしなびた。・・・ぼくの涙を送ったら・・・・」と印象的な言葉が続きます。
5.ああセリム:永遠と1日より。ストリートチルドレンの仲間セリムの溺死体が発見されます。仲間が廃屋に集まりセリムの服に火をつけ追悼するときの言葉です。「ああセリム、今夜君がいないのが辛い・・・海はとても広い、そこはどんなところ?僕たちはどこへ行く?目の前は海、限りない海だ・・これから行く港のことを君から聞きたかった。マルセイユやナポリのこと、広い世界のこと・・・・」
6.目を閉じて:永遠と一日より。アンナがアレクサンドレに問いかける。「嘘をついたあなたは部屋の影に隠れ夜の声に略奪される。私は目を閉じてああなたを見る、耳を閉じてあなたを聞き、口を閉じて訴える。」
7.看守さん:エレニの旅より。反逆者を匿った罪で監獄を転々を移されるエレニ。アコーディオン奏者の愛する夫は、夢を求めアメリカに渡ってしまい、アメリカ国籍を得て従軍し沖縄で戦死する。二人の双子の息子は敵対する軍の兵士となる。「看守さん 水がありません 石鹸がありません 子どもに手紙を書く紙がありません。また違う制服ですね 灰色の制服 黒い制服 名前はエレニです 反逆者を匿った罪です 今度は何処の牢獄です?」と夢にうなされるように繰り返すシーンの台詞です。
8.霧の中の風景:霧の中の風景より。二人の姉弟が、ドイツにいるというまだ見ぬ父親に会いに汽車に乗る。「時間を忘れながら、しかも急いでいる。」「到着する当てのない旅はとてもむなしい。」子供が大人になる過程で失われてしまう大切なものを思い起こさせるロードムービー。最後には国境を越えたのか?幻視なのか・・・・
第二部
1.Bawa Sekar PANGKUR ~ブンガワン・ソロ(グサン・マルトハルトノ作曲)
ジャワガムランの「夢」と最古のポピュラー音楽と呼ばれるインドネシアのクロンチョンの代表的な名曲です。ゆったりとたゆたう曲調をジャワガムラン歌手でもある「さとうじゅんこ」さんがしっとりと歌います。演奏する度に脱力してしまい温泉上がりのようになります。
2.オラショより「ぐるりよざ」「O Gloriosa Domina」
隠れキリシタンの祈りです。さとうじゅんこさんの提案で今回やってみようと思いました。外国の文化・歌を自分たちのものとして少しずつ変わりながら残っているものです。私たちの「うたをさがす」旅にとっておおきな示唆をあたえてくれそうです。
3.舟唄(乾千恵作詞・齋藤徹作曲)~オンバクヒタム桜鯛3
前回に続いて海流に関する歌を2つ。桜鯛3では、震災・原発後に歌詞が生まれ、今日はじゅんこさんの詞も加わります。
4.宮沢賢治より「永訣の朝」「風がおもてで呼んでいる」
二週間前にジャンさんと喜多さんと「宮沢賢治を踊る・奏でる」というパフォーマンスをやりました。賢治さん誕生の2ヶ月前に38メートルの津波を記録した三陸沖大地震があり、死去の半年前にマグニチュード8.1の昭和三陸地震が有りました。「日照りの時は涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き」という風景は、見たところまったく変わりがないのに放射能で農作業ができない田畑と重なります。さとうさんも直毅さんも東北の出身です。このメンバーでいくつかやってみたいと思います。
「永訣の朝」では、「星がまたたく」(乾千恵・齋藤徹)を続けて演奏します。願いはいつも空に向かうのでしょうか。
その後、いくつかの曲を用意しています。これら予定曲を演奏し終わった時に、自分たちがどうなっているのか想像が出来ませんので、ここに書くことができません。何が出てくるかはお楽しみとさせてください。
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実際は:
ジャンさんは予定されていた曲にしばられることなく、その場で感じた時に踊りました。それは、ブンガワンソロでのユーモアに満ちたダンスだったり、ほんの一瞬のダンスだったり、クセニティスでは詩人が買った言葉としてさまざまなフランス語の単語を言ってくれました。ワルツやミロンガはさすがの動き。
演奏に関してその場で変更されたのは
二部で二曲目、オラショより、ではサカラメンタ提要から「In paradisum-Chorus angelorum」(楽園にて、天使の合唱)をやりました。するとどんどんと展開をしていくので、「ぐるりおざ」などを続けてやる必要がなくなりましたので、この一曲のみになりました。オンバクヒタム桜鯛3でのじゅんこさんの詞の歌は歌われませんでした。
賢治さんのあとは、やっぱり東北もので「リンゴ追分」(お母さんが東京に出稼ぎに行き亡くなったという語り付)、その後は「ありがとう命」(私の歌が そこでうまれる。あなたとわたしを結ぶ歌が。みんなと私を結ぶ歌が。ありがとう こんなにたくさんのものを。)
じゅんこさんの賢治さん読み込みは深く、原体剣舞連のオリジナルメロディなどの提案もありました。今後、深めていくことが出来そうです。3・11以後は祈りや鎮魂、祭り、生死などのキーワードに引っ張られるしかないのでしょう。今日のプログラムもすべてそうでした。
アンコールは予定していませんでしたが、急遽、「夕暮れの数え歌」。ジャンさんが客席に来ていた矢萩竜太郎クンを呼び入れてのアンコールになりました。
ジャンさんと「塩」に行き(閉店時間を延長してもらいました。ありがとうございます。)永遠のように長く,昨日のことのように短かった一月半を振り返り、一献。自宅へ帰っても遅くまで話しました。
次の旅までしばし。

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