ビバ!コントラバホ (1)

 

「あのコントラバホ奏者は、弦に弓をくっつけたまま電話に出たんだぜ。」

プグリエーセ楽団とのリハーサルでこんな逸話を聞いた。弓の毛に松脂をタップリ塗っているので、弓が弦にくっ付いたまま落ちなかったという笑い話。

 ズン・ズン・ズン・ズンと強力なタンゴのビートを弾きながらステージで息絶えたコントラバホ奏者がいたというのは高場さんの話。

 「さっきまでそこの川で釣りをしていたんだ。釣り糸はこのベースの弦をちょっとはずしてつかったさ」ロマ(ジプシー)のベーシストの話、え〜っほんと?。

 「戦後の話だけどさ、楽器を米軍キャンプに置きっぱなしにして家に帰ると、ガット弦をネズミにかじられちゃって困ったよ。あれ本当に腸なんだよね。腸詰めソーセージの皮ってうまいもんな。」日本の老ジャズベーシストに聞いた話。

 何か、ベースらしい微笑ましい話です。不器用だけど、親しみがあり、無くてはならず、愛されている楽器です。タンゴではかつてほとんど打楽器が使われませんでした。その役割を一手にベーシストが担ってきました。ここにタンゴの大きな魅力を感じます。注意深く、耳をそばだてて聴かなくてはいけないベースのビートをリズムの(=音楽の)中心に持ってきている。オトナの音楽だと思います。注意深く聴けば、いろいろなニュアンス、インスピレーションに満ちているのです。音の大きな楽器も、リズムの中心であるコントラバホに合わせて演奏する。そこに大事な約束事があり、音楽を豊かにしていたのではないかと思います。ピアノの低音とのユニゾンにしてもそうですし、かつてジャズもそう言う時代があったと思います。

 大きな音を求めてアンプ・PA を使えば使うだけ、小さい音を使うことが出来なくなります。さらにPAを使うと必ず小さなランニング音が流れてしまいます。パソコンを切るだけでホッとするあの暗騒音が入ってしまう。それだけダイナミックスが減っていくわけです。0〜100は無限大だけど、1〜100は単に100倍、2〜100は50倍にしかならない。

 コントラバスのPA、録音、再生はとてもむずかしい。私自身満足できたことは数少ない。スタジオのエンジニアでも実際の生音を知らない人もいる。一方、コンバスの音がキチンと再生できれば一流のオーディオ装置だという説がある。オーディオ評論家江川三郎さんはコントラバスを家において、再生音と聴きくらべていたそうだ。彼の発想はユニークで、交流電気のプラグのプラスとマイナスを揃えることで音が良くなる(今や常識)とか、楽器をメガネ拭きのようなマイクロファイバーの布で磨くと音が良くなるとか、ベースの下に特殊な板を置くと音が良くなるとか発言を続けてきた。貴重な人だ。

 もう一人、お亡くなりになったオーディオ評論家長岡鉄男さんは、私のLP/CDを気に入ってくれていて、ある時、お宅へ(方舟)招待していただいた。彼は高価なものを使わずに自作で、高級機をしのぐ音を再生していた。彼もコンバスの録音・再生を大いに興味を持ち、世界中のコントラバスのLPを紹介していた。その中で私の1枚目の録音「TOKIO TANGO」も紹介してくださり、オーディオ関係で随分売れました。(奇しくもTangoと言う題名!)今は、長岡さんのお弟子筋にあたる小川洋さんに数多く録音をしてもらっています。彼は大学時代コンバスを弾いていたのでますます信用できます。

コントラバホの話は続けましょう。コントラバスの地位が向上すれば音楽が豊かになる!?。

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