絵と踊りと音との旅 その1

昨年のジャン・サスポータスとのツアーも音と踊りのツアーなんて滅多にないよ、と聞かされ、へえ~と思った。今回は、絵と踊りと音のツアーだ。これも滅多にないことに違いないが、私の感覚としてはごく当たり前の成り行きだ。気の合う人とだったらごくフツーにツアーも出来る。主催してくれる方はたいへんなのかもしれないが・・・・・

初日は、岩国。昼の演奏なので前の日入り。米軍基地問題で揺れに揺れている最中。原田文明さん、アートムーブという現代美術の市民運動を繰り広げている中心人物だ。彼の呼びかけで4年前に「表現の成り立ち」という催しがあり、私も参加した。今回は「具象の未来へ」というテーマ。

CD「 Pagan Hymn」の1曲目は岩国で録音(ミッシェル・ドネダとチョン・チュルギとのトリオ)したし、前回のアートムーブでは、修復中の錦帯橋の廃材インスタレーションの部屋でソロ演奏。廃材の上の登って弾こうとした時、満場の聴衆がどよめいたのをよく覚えている。昨年はジャン・サスポータスとのデュオでもお世話になった。

旅するベーシストへお知らせ。700系のぞみの新車両は車掌室・荷物室が8号車に移りました。11号車を予約していた私は、11号車にある予備の部屋にベースを置きましたが、入り口が狭くちょっと危なかった。要注意。

広島で在来線に乗り換え、夕日と海と川を眺めての移動はちょっとホッとする感じで嬉しかった。いつものビジネスホテルに着くと、シンポジウムを終えた小林裕児さん夫妻に会う。同じくシンポジウムに参加していた小林亘孝さん、長谷川繁さんに紹介される。彼らは、ポスト奈良美智・村上隆という位置にいるトップランナーだそうだ。

着いたばかりだが、打ち上げに参加。久しぶりの沖縄料理と久米仙、瑞泉。節制は一休み。
翌日、11時から小林裕児さんのギャラリートークを拝聴。自作の大きな絵の前で、平易な言葉で次々語られるコトバが熱心な聴衆にしみ込んでいく。日本での洋画の歴史(宣教師時代から)から自作の解説に自然に移り、すべてのものが具体的な動機や目的があることを実際の絵で示す。見事なレクチャーでした。(先日の私の大学での講義ではダメだ。自分が正しいだけ。)「私は、日本の絵画の伝統である物語性を出したい」というコトバが印象的だった。

その後、休憩を挟んで私とのライブペインティング。聴衆の熱心な視線が痛いほど。今年は、大阪高島屋画廊でのデュオ、セッションハウスでのフレデリック・ブロンディ、東野祥子と、「いずるば」でミッシェル・ドネダ、岩下徹と、文化村でのジャン・サスポータス、上村なおかと、楽しい共演をしているので、小林さんとのセットはとても楽。ヤギに乗った逆さづりの女性、バランスがとても良い。終了のアナウンスが済んでもなかなか立ち去らない聴衆。あれは何だったのか?

原田さん達と名残をおしみお別れ。きょうはこのまま小林夫妻と広島へ移動。日曜で宮島帰りの観光客でにぎわう在来線の中でも小林さんは厚いスケッチブックにデッサンと色付けを続けている。「いつでも微電流を流していないと」とおっしゃる。音楽でこの作業に対応するものは何だろうか?考えてしまう。

広島のホテルに着く。夕食後、バーで一杯。話は旭川でのワークショップのことから、小林さんの芸大時代、野口三千三、三木成夫という贅沢な保健体育の話へ。ユニークで、ラジカルな思想を持ったこの二人に触れた学生は本当に幸せだったろう。ともあれ明日からは岩下徹さんも加わっての二日間が始まる。

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