今年一年ご苦労さん、新しい弦をオーダーして今日手に入れた。毎回のように新しい弦を使うギタリストとはちがって、ほとんど一年に一回弦を張り替える。何しろ高いのだ。(弦ワンセットでギター本体が買えてしまいます。)私の今使っている弦はGAMUT社のもの。ダルースというミネソタにある手作りの工房。ダルースと言えば、ボブ・ディラン生誕の地として有名。また、松本市にダルースという名前のライブハウスが有り、私は随分世話になっている。(今年の年末にも行きます。)
写真にあるように低い二本はTestu modelとなっている。tetsuのスペルが違っているのがカワイイ?。私はガット弦愛好者。なぜこのモデルができたかの話。
このメーカーのガット弦は倍音が豊か、丁寧な作りで気に入っていた。友人・仲間にも教え、広めた。日本での輸入元として鶴屋弓弦堂で仕入れることなり多少安く買えるようにもなった。愛用して二年くらいたったころ、こころなしか弦の太さが変わった気がした。それも細く。世の趨勢は、弦は細く、弾きやすく、大きな音が出るようになっているので、それに倣ったのだろう。が、私は太い弦が好きなのだ。太い=倍音が多く出る=雑音成分も増える=弾きにくい=音程が取りにくい、また、作るのにもより多くの材料と手間がかかる、というわけでドンドン敬遠されている。しかし代え難い音質の素晴らしさがあるので極太にこだわっている。細くなるのには困った。メールで苦情を言う。そんなことはない、ちゃんと精密に作っているという答え。いやいやいやそんなはずはない、と実際の弦を二種類送る。わかった、徹の要求通りに工場のノートに書いておく、というやりとりの末、Testu modelが誕生した。
やはり言うべきことはちゃんと主張しなければならない、と思う。やっかみかもしれないが、どうも日本に入ってきている弦楽器用品は雑なものが多いのではないか。まず感じたのは松ヤニ。これも何回も言っているが、ベルナーデル社の松ヤニはかつてすばらしいものだった。それがある時、変わった。悪くなった。しかしたまに良いものもある。色を比べてみる。全く違う。これだけ色が違うと言うことは成分や混合率、製造温度などが違うのだろう。そうすれば自然に音は違ってくる。楽器店に行ってすべて出してもらって色の薄いのを選んで買ったものだ。楽器店の人もその違いに初めて気がつきびっくりしている。日本ではブランドで売れてしまう。そこにつけこんで粗悪品を日本に流しているのではないかとさえ勘ぐってしまったわけだ。
確かに初心者の頃、弦はこれ、松ヤニはこれ、と定説のように言われていて何の疑問もなく従っていた。20~30年前は本当に情報過疎だった。私自身だんだんと音の嗜好がわかってくるといちいち検証をはじめた。フレンチ弓、ガット弦、ヴァイオリン用の松ヤニ、オープンフロッグ、テールワイヤーなどなど試してみる。ひとつひとつ試行錯誤をして(お金と時間と労力をつかって)今のセッティングになった。一般のセッティングと大いに違っている。ところがどうだろう。最近になってすこしだが私の方向に賛同者が出てきている。
数年前、カナダ・ヴィクトリアヴィルのフェスティバルでバール・フィリップス、ジョエル・レアンドル、ウイリアム・パーカーと一緒にベースカルテットをやった。バール、ジョエルの弦はよく知っている。パーカーさんが見たことのない弦を張っていたので聞くと「名前は知らない、一番安いから買った。楽器だって北朝鮮製をネットで買った。」北朝鮮というのは間違いで韓国製のようだった。(ミュンヘンと書いてあったが・・・・)アメリカの黒人ジャズプレーヤーということを強く思った会話だった。
そのカルテットのライブCD↓