「いずるば」ワークショップ 沢井一恵ゲスト

一恵さんとはヨーロッパでのインプロツアー、アメリカでの「かむなぎ」もありましたが、アジアが印象に残っています。特に韓国。箏との出会いの頃にちょうど私が韓国シャーマニズム音楽に惹かれていたので、自然に一恵さんも韓国に引き込んでしまったわけです。

韓国には3種類の箏があります。カヤグム、アジェン、コムンゴ。それぞれ指・弓・専用の棒で演奏します。それも大変ユニークです。(わたしのツボでした。)共通するのは大きなビブラートです。それはもう西洋音楽でいうビブラートの範疇を越えています。そしてそのビブラートこそ韓国音楽の重要要素です。

四半世紀前になってしまいますが、ユーラシアン弦打エコーズというコンサートをやりました。当時は怖いものなし。芸術文化振興基金が先端芸術という分野を始めたというので、助成金のことなど何も知らないのに、子供を連れて問いあわせに行って初めての書類を書き込んで提出したら「通」ったのです。

そこで、当時共演していた雅楽・邦楽・ジャズのオーケストラに韓国音楽をぶつけようと思ったのです。自分の身体の中にジャズもブルースも4ビートも8ビートもないことが実感され、学習したものでなく、自分の中に深く沈殿してるものを掘り起こすべく邦楽雅楽能楽などに接近していました。その中でも私に興味をもってくれたのが沢井箏曲院でした。

ユーラシアン弦打エコーズでは、一恵さん栗林さん率いる箏アンサンブルが大事な役目を果たしていました。韓国音楽も国楽と巫楽混成、パンセホールでは金石出アンサンブルのゲスト参加。

金石出のホンモノさにもっとも反応したのが一恵さんでした。ホンモノ同士はどこでも繋がります。

一方「韓国と日本とは玄界灘を挟むだけの近さ、というけど音楽に関しては玄界灘は深い」という名言を残しました。

違う、深く違う、ということが認識できるということは、違いが分かる=共通部分も分かるということでしょう。(そう言えば、当時ご主人が「違いが分かる男のゴールドブレンド」のコマーシャルにでていらした。)

韓国へ何回もご一緒しました。シャーマン達とのレコーディング、小さな村の「クッ」(金石出一族が参加)に参加、CD「神命」が大変評判になりたくさん売れたそのお礼とのことで中央日報ホアンアートホールでの大コンサート(やはりユーラシアンエコーズと名づけられました。)

私がユーラシアンと敢えて名づけたのは、当時も今も、日本と韓国・朝鮮の問題は、日韓・韓日という2国間関係で捉えることばかりだったので、どっちがどうだ、あっちはこうだ、で比較する愚を抜けられないでいるような気がした。それよりも大きくユーラシア大陸の東で、韓国は大陸からの影響、日本は南の島々からの影響を受けてそれらをぶつけて大きなイメージを作りたかったからです。

ビート、グルーブ、永遠に円を描くリズム、深くなる呼吸、など日本の箏音楽には縁遠い概念、息を詰めて一撃を与える日本、キッパリ終わるために演奏する日本、その差は大きいですが、両方持つことができれば、あるいは、鑑賞することさえできれば素晴らしいことと思いました。
その中で、私のように理屈を言うのでは無く、体当たりしたのが一恵さんでした。ご一緒に多くのCD録音もしました。(韓国制作です)。

最近だと、姜垠一さんのオーケストラでソウルの国立劇場での演奏会に2人で呼ばれました。ちょうどセウォル号が沈没した直後、パク政権が揺れていたときで、演奏会直後に会場で何人かがざわつきました。一恵さんと、すわ反日の動きか?と案じましたが、そうではなかった。

舞台上では、韓国人も巫族も日本人も精一杯音楽に集中します。そこには混じりけのある気持ちは存在し得ません。政治は音楽のうしろにトボトボとついていくだけなのでしょう。音楽が役に立つこと。

4月4日にはそのあたりの話もでることでしょう。楽しみです。

御予約は私の所でも扱います。ご連絡くださいますようお願いします。