生きる予定が充満した日々でした。もとよりその保証は一般に比べて確実に低いのですが、致死率100%のニンゲンとしては、多少の差でしかないわけですよ。主治医曰く「還暦も過ぎれば、さまざまな病気で亡くなる可能性がどんどん増えてきますでしょ。その1つの病気で、しかも、急に逝っちゃうこともないし・・・」画家の小林さん曰く「手足が痺れて力が入らない、筋力・体力が落ちた、と言っても、20年後を想像すればそれが早く来ただけと思えば良いのです」なるほどなるほど。(それを思うと21歳年上のバール・フィリップスさんのスゴサを実感します。彼もガンを克服して現在は大活躍中!ECM最後のソロとして録音した楽器はフライトベースだったとのこと。あらゆる常識を疑い、常に挑戦。ぶっ飛んでます。ほんとうに見習いたいです。)
ソーシャルワーカーとの面談も始まり、心配して娘が長崎より上京、同席してくれました。早く言えば私の終末医療の相談なのですが、さすがに、この病院の緩和ケア担当者は人間的にも優れ、経験豊富で患者を安心させてくれる人が選ばれているのでしょう。とても穏やかに、ホスピス予約などの話題さえにこやかに進みました。娘が「長崎の病院の可能性は?」など予想外の提案してくれ、なるほど、首都圏にこだわる必要も無いのだと思いました。それもいいな〜。
病院の帰り(なにしろ朝6時に出発して、しかも本日は抗がん剤治療もスキップしたので時間はたくさんあります。)にコントラバスを2台代々木の弦楽器工房高崎に持っていき、調整・修理を依頼。長年のつきあいの高崎さんはほとんど同年代なので何も言わなくてもわかり合える得がたい仕事仲間です。フライトベース(雅)は、3月の竜太郎さんとの京都ダウン症の日記念、DVD発売先行上映・ライブ用に調整。ガン&ベルナーデル(バール)は来たるべきバッハ録音への練習のため。
そう思うと、生きるしかないよね、という気持ちにさせ、自分をその気にさせるわけです。
そして翌日、庄﨑隆志さん・松本泰子さん・詩人達とのライブDVDの音のマスタリングに再び東京へ。(運転を真妃に任せて安心・楽々)
ほとんど主役の庄﨑さんの映像無しで、音のみでも充分一時間半ちかく堪えられるクオリティが確保されていていました。エンジニア自身が音質・内容に理解を示してくれて作業に熱がはいり、クリエイティビティを最大限に発揮してくれ、しかも、あらかじめ細かな作業を終了させてくれたので、こちらは、じっと聴くのみ。
泰子さんの伸びやかな声が見事にキャッチされていて、声が聞こえた瞬間にそこにいたみんながほんとうの幸せになりました。
だんだんと高揚していく第Q藝術の様子も手に取るようです。詩人の朗読もフルートもピアノもダンスの音も見事に捉えていました。
あまりの満腹感もあり、私が長時間堪えられないとのことで、エアジンでの三角みづ紀さん参加の3曲は、後日ということにしました。第Q藝術の音だけでも十二分満足。これに映像がはいり(香港のウオンさんの素晴らしい撮影)、エアジンでのみづ紀さんとの映像・音声(朗読と即興詩)がはいるという贅沢極まりない人類へのプレゼントになります。ま、なんと偉そうな!
写真;前澤秀登