おさらい

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知っているようでしらないことから、おさらい1。

バンドネオンはバンドさんというドイツ人が発明したって本当らしい。

オルガンのない教会で賛美歌の伴奏用に作ったと言うことです。
楽器に紐を通す穴があり、紐を通し首から提げたのでしょうか。
押しと引きで音が違うという変則。ただ簡単な和音は簡単に弾けるところもあり。

この楽器の特徴はやっぱり音でしょうか。
デフォルトの音がビブラートを伴った「哀しい」響き。
それは長所でもあり逆に短所にもなるでしょう。

ビブラートは、共振を誘い、共感を呼びます。

つまり、バンドネオンは初めから共感を強制してくるのです。それを予め受ける覚悟と期待・願いを持つ人にとって、これ以上の音はありません。あたかも「泣女」に誘導されるように思いっきり泣きたい人にはピッタリ。むせび泣き、叫び、咆哮するサックスも同じ魅力でしょう。ジャズにはサッチモ、ビリーホリデイ、アルバートアイラーへ繋がるビブラートの歴史があり、金石出が違う場所で繋ぎ、美輪明宏が継いでいます。(飛びすぎ?)

一方、それが苦手な人、そういう気分ではない人にはキビシイ。情念や泣きには付いていきたくない時があります。泣きたいばかりではないし、感情を合わせるのではなく、一人ひっそり泣きたいときもあります。ノンビブラートの古楽などが好まれる所以でもあるでしょう。

アルゼンチンに渡った船乗り達が楽器を運び入れたということ。
遠い故郷ヨーロッパを懐かしむ感情が、もっともっとひろがっていろいろな表情を持つようになりましたが、基本はやっぱり郷愁や哀憐、泣き、そしてそれを吹っ切るダンス!

フランスメキシコ戦争でフランスで捕虜となってメキシコへの思いでつくった「つばめ La Gorondrina」はすばらしい歌です。逆方向ですが、思いは同じ。

一方、十七絃は、宮城道雄さんが考案した伴奏用の低音箏です。宮城さんは創意工夫の人でピアノに対抗して「88弦」の箏も作りました。伝統の真ん中にいる人は、かつて異端と呼ばれた人が多いのです。(宮城道雄・沢井一恵・アストルピアソラ・パコデルシアなどなど)

宮城さんが伴奏用に作った十七絃をメインのソロ楽器として演奏し続けているのは、沢井一恵さんと栗林秀明さんでした。そしてここに深山マクイーン時田さんが加わったのです。こうやってこの三人に出会えている私。なにかの縁でしょうか?

箏という楽器は「龍」になぞらえてあり部分の名前に残っています。中国に25弦の箏があり、韓国と日本に別れて12弦(カヤグム)と13弦(箏)になったという伝説。12は韓国音楽にとって大事な数字ですし、ビブラートやリズム、呼吸、乗りなどカヤグムと箏との違いは大変大きい。美意識の違いを極端なほど表しています。それでも、良さが分かるというのは、近い証拠なのか?

おさらい2:箏と琴の違い。琴は弦が両端で留めてあるだけのもの、箏は弦に駒(柱・じ)を挟んで音程を換えられるものです。私も箏奏者に聞くまで知りませんでした。

その箏柱から発想して30年前にコントラバス用に考案したのが「ビーティック」。国際コントラバス大会でコントラバス五重奏が使い、とても注目され、マーク・ドレッサー、ジョン・クレイトン、ルーファス・リードたちがこの道具を買い求めるために列を作りました。イスラエルの奏者はこれを使ってCDを作りましたが、まったく発想の違う使い方をしていました。面白い。

沢井一恵さんは箏の一番美しい音として、柱の立てていない箏を野外に出し風が通り抜けるときの音だと言います。色紙を求められると「無絃琴」と書いたりしています。

出した音、出ている音、とともに出なかった音を統合するのが音楽とすると、この月のトリオは、音にならなかった部分でしっかりと結び合ったものになっているのではないでしょうか。

江古田音楽化計画 2018Vol.3~月神宴~
齋藤徹・鈴木ちほ・マクイーン時田深山
2018/09/30 @ Foyer ekoda
13:30 open 14:30 start
¥3,500 予約 ¥4,000 当日
Foyer ekoda:練馬区旭丘1丁目33-10
03-3953-0413
予約・問い合わせ:ue6.1002@gmail.com
江古田音楽化計画 樋口

CD「アウセンシャス」のジャケットのバンドネオン写真はピアソラの舞台写真(岡部好さん)、ピアソラの「不在」をテーマにして録音しました。