かみむら泰一さん

 

かみむら泰一さんとのDUOが土曜の午後クールジョジョです。

内容を説明するのに「ショーロ、即興、ジャズ、オリジナル」と書きますが、案外これは普通ではない。

ショーロ、ジャズ、オリジナルという並びだと「そんなこと」だろうということで納得していただけます。しかし「即興」というのが入っていると鬼っ子のように振る舞い、収まっていた周囲を攻撃して、全体像が何のことかわからなくなります。

まず、一般の認識として「作品」と「即興」は対義語として(相反するもの)として受け取られるので、両方やるというのが「中途半端」の印象を与えます。もとより私は「作品(作曲)」と「即興」は対義語ではないと考えています。(即興の対義語は常識・自分自身)

違う視点から見てみましょう。

即興は「音楽になる直前の姿」とも、「音楽以外全て」とも捉えることができます。この頃マイブーム的に言うと出てきた音楽と出なかった音楽の総体がその「音楽」。

私も泰一さんも「音楽」が好きだったのです。そして即興も好きだったわけです。ですから両方やってみたいのです。以前は即興をやる場所と音楽をやる場所を分けていましたが、最近は一緒でも構わなくなりました。

音そのものによる即興のみに興味がある(それ以外興味が無い)という方もいらっしゃいます。一方、音楽にのみ興味があり即興に興味が無い方も当然いらっしゃいます。

ではもう一歩進んで、何が「良い」音楽か?何で「良い」とわかる・判断するのか?さらに進んで「美しい」「良い」とはそもそも何?

古今東西「名作」「名曲」があります。なぜ?分析すればf分のⅠゆらぎだったり、黄金分割だったり、フィボナッチ数列だったりするのかもしれませんが、簡単に言って「あなたの身体が知っている」と言えないでしょうか?(あなたではなく。)そこでは、なにもかもがピッタリはまってスッキリ。はじめて食べても「美味しいもの」はわかり、「こつ」をつかんでしまえば歩くことも、走ることも、自転車の操縦も、水泳も間違えることはない。

私たち自身の生まれてからの体験の何億倍も身体は知っています。音程が悪いのも良いのもだいたいわかりますでしょう。

泰一さんは若い時にジャズに生きることを決め順風満帆に進んでいきましたが、ソロアドリブをリズムセクションがサポートしていくというシステムそのものに疑問を持ってしまいました。ジャズ愛以上に「平等」が信条なのです。ジャズで平等というと、代表はデキシーランドジャズとオリジナル、そしてインプロです。それらに惹かれていったようです。

オリジナル作品をどんどんつくりコンボを組み、録音・演奏と活躍していたそんななか311東日本大震災および原発爆発が起きました。この過酷な現実を前にして、オリジナル作品を作ることができなくなった、と言います。彼の身体がストップをかけたのです。

ちょうどそういうときに私の活動に興味を持ってくれてDUOを始めました。サックスの音程の良い泰一さんにはショーロが合うのではないかという推測でショーロを紹介。(ショーロもデキシーランドと同様に一緒に・平等にソロを取ります。)

そして、インプロもプログラムに取り入れました。ジャズ出身のインプロ奏者がフリージャズに行くのに彼は、ヨーロッパ的なインプロへ興味を示します。全ての音を聴きたいということで、自らの音量を下げる工夫をし、ベースの小さな音、無音を聴くことができる楽器調整を施しました。

私が311以降取り組んだ「うた」シリーズの中から乾千恵さんの言葉によるオペリータ「うたをさがして」の楽曲に興味を持ち、少しずつレパートリーに入れてくれています。あのツアー以来という曲も何曲もあり、私としては、大変嬉しい。

彼がリーダーでやっていますので、選曲も、やる場所もお任せしています。毎回毎回、長時間考え、試し、練習して、選曲しているようです。いつもきっちりと筋が通っています。ショーロもオーネットもオリジナルもインプロも居心地よさそうに並んでいます。

初めお話をしたとき、なんてここまで丁寧なのだろう?と少しいぶかしく感じてしまったほどです(スミマセン)。しかし、それが杞憂に過ぎないことはすぐにわかりました。まよいごとだらけの世の中に、筋を通して大事に1回ずつのライブをしているのです。貴重なミュージシャンですね~。