徹と徹の部屋vol.1

徹と徹の部屋vol.1

久しぶりに降り立ったポレポレ坐で「ただいま〜」と言うと「おかえり〜」と以前からのスタッフが声をかけてくれました。うれしいものです。前回が1回目の手術直前、森田志保さんジャン・サスポータスとのトリオでした。そして昨年7月は2回目の手術直後で無念のキャンセル(私欠席の中、ミッシェル・ニンは日本伝統音楽の奏者達とここポレポレ坐ですばらしいLIVEを行いました。)それ以後、ポレポレ坐もさまざま刷新され、新たな空間として息づき始めていました。

不易流行「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」 去来抄(芭蕉)
そのままでした。

岩下さんは、ダンスコスチュームの色も、体脂肪も、髪の毛も削ぎ落とし、舞踏もモダンダンスも山海塾も即興さえも捨て、そして全部拾いあげ、私はクラシックもジャズもフラメンコも韓国伝統音楽も即興も忘れ、そして全部思い出し、ガン患者であることを忘れ、ガット弦も松脂も気にせずに只管演奏。

シリーズ化すべく隠しテーマとして私はバッハの無伴奏チェロ組曲を1つずつやることを課しました。岩下さんにも伝えました。すなわち最低6回は続ける手掛かりです。昨日は春らしく第一番を演奏、どのタイミングでやるかは私に任されています。

第一番は短いと言っても、そのままやっても15分かかります。ダンスを観ながら、テンポ・強弱・表情を即興的に展開し、リピートはやったりやらなかったり。これがとてもおもしろいのです。昨日は、バッハを始めるタイミングに関してかなり「挑戦」しました。

初めから飛ばしてきている岩下さんが一息いれるかな?というタイミングで始めたのです。彼が休むことも想定内でした。しかし、彼は休むタイミングが何回か有ったのにもかかわらず、踊り続けました。

そうくるなら、こちらも覚悟します。結局一時間二人ともぶっとおしのストロングな展開になり、クレッシェンドで揺さぶり、高揚させ、沈黙という展開(生と死)を何通りもやったことになります。意地っぱりなおじさんふたりです。

終演後、少しトークをしようということになり、強度のあった時間をいとおしむように、朗らかな会話をしました。

次回が急遽決定7月14日ポレポレ坐です。風が吹いてきたようです。真夏の第2番はホ短調。