広島 春の旅 2018

美術家との関連演奏が続きます。どう言うわけでしょうか、美術家との繋がりはいつも長く・深く続きます。前世の因縁かもしれない、と冗談を言えるくらい豊かに恵まれています。

広島の黒田敬子さんが個展を開催するのに合わせて会場でソロがあります。(本日初日で最終日にソロです)、その後2つのソロ、1つのワークショップを広島でやります。旅から旅へということができる体調ではないので、同じ地域での仕事を組んでいただきました。

足元が不自由なので、楽器を抱えながらの移動がどうしても不安なので、運送会社に委託してという旅です。こうやって少しずつ慣れて行って、とも思いますが、多くは望まず、欲を出さず、一回一回が全て。精一杯やります。

こんな文章を書いてみました。

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春の旅2018 広島 へ向けて

画家の黒田さんに初めておめにかかったのは、広島現代美術館がアバカノヴィッチの作品を購入し初展示した記念イヴェント(土方巽アスベスト館公演 1991年)の時でした。私は音楽を担当し沢井一恵さんらと生演奏をしました。アバカノヴィッチさんに特別の思い入れのある黒田さんはあまりお気に召さないようでしたが、ともかくご縁ができ、以後、ツアーを組むときに相談に乗ってくださいました。

あっ、この方の志は高く、求めるものは「普通」ではないとすぐに気がつきました。「決して何でも良いということはない。問われているのは私。私自身を掛けた企画を持っていかねばならない」と。

それが分かってからは、緊張感を持続しながらも、順調に、実にさまざまな豊かな経験を共有してきました。一緒に成長してきた、生きてきたという感覚です。そんな得がたい友人が日本中に何人かいらっしゃいます。

それにブレーキをかけたのが私の病(十二指腸癌)でした。昨年7月、私が自信を持って組んだMLTトリオ(ミッシェル・ドネダ、レ・クアン・ニン、徹)が私の緊急手術により危ぶまれました。ミッシェルもニンも私抜きだと日本に行く意味がない、と言ってきましたが、「日本には黒田さんはじめ2人の演奏を本気で求めている人がいるから、来てくれ!」と願い、来日してくれました。

案の定、日本各地で多くの感動と出会いを果たしツアーを実施。私の「不在の在」を活かしてもらえたようです。ブレーキではなく、ブレーキをかけ、一旦たちどまり、ふたたびアクセル、さらにギアアップをめざしています。(おかげさまで手術は成功しました。)なにも、早いだけが良いわけではありませんし。生きていることが大事。

現在、手術でキャンセル・延期をした仕事をひとつずつやらせていただいています。この広島ツアーは昨年の恩返し+ソロツアーの延期の補てんという面があります。

単なる補てんにとどまらない「今・ここ」を共有したいと願っています。命に対する新たな視点を得たことにより、生きること、表現、音楽、人間関係、すべてに及んでいるはずです。副作用はいまだにキビシイものですが、みなさまの「気」をいただきこのピンチをチャンスに変えたいとこころより願っています。欲張りですね・・・

どうぞよろしくお願いいたします。  (齋藤徹)

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病気発覚直前のツアーは、ソロで広島が最終でした。その際、ゲストに出ていただいた大槻オサムさんが仕切っているカフェ・テアトロ・アビエルト(ロルカから来ていると言います)でソロ(ゲスト大槻オサム)とワークショップ、最終日は初めての場所 音cafe Luck でソロをやらせていただきます。

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アビエルト ワークショップについて

ちょっと立ち止まって「音」を意識してみませんか?
聴くことが待つことにつながり信じることにつながり・・・

いそがしく立ち回り、効果や業績を競い、成功失敗を簡単に決められる、そんな世の中を違う目で観たい!

「損得」だけで決めて良いの?
今の「得」は結局「損」だよ、というだけでは循環におちいってしまって抜け出せません。あらたな視点・尺度が欲しい。

「承認欲求」から逃れられるの?
自分を認めて欲しい、はい、充分に分かります。「忘れられること」が人にとってどれだけ辛いことか(ローランサン「鎮静剤」)。そのことと「成功する」「有名になる」「力のある人に近づきたい」ことは違うと確信したい。

「強さ・速さ」って必要なの?
いろいろな視点と尺度をもちたい。「弱さ」のチカラ!根と羽根を同時にもちたい!

そのために、何をしよう、何を心がけよう?

私たちの持っているこの「からだ」、これこそが大自然の一部です。自分で作ったものなどありません。からだを自分のものと思わず、こころさえも自分のものと思わず、からだやこころに素直に聞いてみる。

そのきっかけとして「音」をとらえてみたい、そんなワークショップにしたいと思います。音・声は呼びかける仕草、踊りは探す仕草。

映像や音源を使ったお話そして簡単な実践をしてみましょう。
ワークショップでのコトバや動作がひとつでも、あなたに引っかかることを願っています。

こんなトピックを使いたいと思っています。↓
世界中で海のリズム、12拍子を春夏秋冬でとらえる(韓国シャーマン)、みんな聴いていた胎内音、揺れ、振動、ビブラート、ミラーニューロン、漢字語源から探る、微細な音を聴く、音の記憶(m、sh、背骨と口との方向)、春日大社の警しつという声の出し方、喉歌、無絃琴などなど。

音楽の経験を問いません。障がいのある方、日本語が分からない方は事前にお問い合わせください。なるべくご一緒にと思っています。
齋藤徹

ちなみに私と広島の縁は長く、短期間ですが広大附属福山高校に在学していました。同級生に現在福山リーデンローズ館長のコントラバス奏者溝入敬三さん、同時期に同系列の広島高校に吉野弘志さんや細川俊夫さんがいて、福山校は広大水産学部と同じ敷地にあり、坂田明さんや井上敬三さんが歩いていたということ。そうそう、ずいぶん昔に溝入さん、吉野さん、私と、もう一人(笠原さん?)とコントラバスカルテットで現代音楽やりましたね〜。