聞こえる?聞こえない?

 

10月3日シアターχでの公演に向けてのリハーサルが続いています。

庄﨑隆志さん、絶好調です。

人はそれぞれ人生で何回かピークを迎えるのでしょうが、彼の今は正にその瞬間でしょう。ちょっと、あっちのほうに行きかけた私のような人間だとよりよくわかる気がします。

精神的にも肉体的にも充実、充分な経験による知恵・人間理解・社会理解も深まっていています。自信に満ちた起居振舞は見ているだけでもこちらの気持が上向きになります。その自信と天才は、決して上滑りせずにあくまで視点は低く、弱者に対する深い理解と愛情により、彼のみに可能な表現を可能にしているように見えます。俳優・演出家としてだけではなく、絵描きとしても、ダンサーとしても、身体表現者としても彼の身体の中で一つに集約しつつあるのです。

このところ私の関心だったのは、副作用により身体が言うことを聞かず、思うように演奏が出来ないことにまつわる事でした。「テクニックとはなに?」「伝わるものは一体何だろう?」etc.

私と隆志さんの関係に基づくものは、より根本的なところまで溯ります。テクニックとか、伝わるとか以前に「聞える」か「聞こえないか」という事なのです。

ところが、そのことを危惧したことが一度も無いのです。最初に出会った瞬間から全幅の信頼を置いています。( おそらくお互いに)

隆志さんは幼少のころ聞こえていたので、言葉とはどんな機能をもっているかをしっているので補聴器・読唇を使ってのコミュニケーションはある程度できます。しかし私の心深く感じるところはそういうことではありません。

溢れるような、いや、溢れてしまって自分ではどうしようもできない「あるもの」が共通しているのかと思います。それは音楽か、ダンスか、演劇か、などは関係ありません。そして、聞えるか、聞こえないかさえも超越しているのでしょう。

音とは何か、ということを扱ったワークショップのレクチャーに参加してくれました。そして、「音」とは、聞くものに非ず、待つもの、見るものという白川静さんによる漢字語源説に強く共鳴してくれました。

振るえで伝わること、媒介としての空気・水・肉体・海・糸。私の出す音は、隆志さんの蝸牛管の中の水へは伝わり、振るわせています。その振るえが脳へ伝わる繊毛〜神経が機能していないだけなのだと仮定するとなんだか納得します。その水の最もちいさな海が涙だとある詩人が言いましたね。

また、言葉で何が伝わるのか?を考えてみても、日常生活では、実際、誤解だらけじゃないか!伝わったといっても「意味」がつたわっただけ。ではその「意味」って何?勝手な納得?

音楽で何が伝わるか?を考えてみても、てんでバラバラでしょう?ただの欲求不満解消だったり、カタルシス追求だったり、試合前の思考停止用だったり・・・

言葉は、言葉を受け取り理解した後に成り立ち、音楽は音が終わったときに成立する、という最近のマイブームの元になる経験をリハーサルの度に感じています。

言葉も音も媒介しないコミュニケーションは成り立ちます。生きている身体があり、身体の中の水が共振・共鳴し、狂おしいほど言いたいことが溢れて、同じく強く求める聴衆・スタッフ・空間があれば、十分以上に成り立つのです。

さあ、共有しましょう。

http://hubn.jp/21�●日程  10月3日(火)2回公演 ・昼の部15時〜・夜の部19時〜 �     ※各回、開演の30分前開場 �●劇場  シアターXカイ  東京都墨田区両国2-10-14 両国シティコア内�●出演  庄﨑隆志・齊藤徹 ・東駒子�●入場料  前売り2,000円 当日2,500円�●主催   office風の器・「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会�●共催   墨田区 公益財団法人墨田区文化振興財団�●特別協賛 アサヒグループホールディングス株式会社�●後援   墨田区聴覚障害者協会�●予約申込・問合せは、office風の器 事務局まで下記4点をご記入の上、�FAXまたはメールにてお申込ください。�事務局より予約番号、代金振込先を折り返しご連絡いたします。�①お名前(代表者)�②開演時刻�③枚数�④連絡先(TEL/FAX/メールアドレス)�・FAX : 045-974-1620  ・メール: officekazenoutsuwa2016@gmail.com �北斎 人形劇 庄﨑隆志�北斎の息遣い聞こえてきます。リアルを追求した人形たちに北斎の魂が蘇ります。伝統の人形劇を堪能ください。

2018年1月のいずるばでのワークショップには隆志さんをゲストとしてお迎えします。そのときにいろいろいろいろとざっくばらんにお聞きしたいと思っています。いままで、彼らの側からの意見を聞く機会さえほとんどなかった。それもご期待下さい!。