ジャンさん来日

キャンは掃討できましたが、抗キャン剤の蓄積副作用がいまかなり荒れています。手足の指の痺れ、膝下の浮腫みは夕方になるとパンパン、足裏の浮腫みは、身体をふらふらさせ、歩いてもよろよろです。私のような者に厳しいのは、手の指の痺れが楽器を弾くことを不能にすることです。(それを思うにつけ、退院翌日にSpace Whoで演奏したことは今でも信じられません。)
それでもなんでも、いま・ここで生きていることのありがたさにまさるものはありません!!
毎日毎日手足の運動、もみほぐしは数時間以上やっています。ありがとうありがとうと言いつつ身体の部分をさすり、もみほぐすのです。足の薬指など小さくて可愛そうなほど。この指を意識したことはこの60年ありませんでした。すべての身体の部分を愛おしんで感謝してもみほぐします。しかし、なかなか改善はしません。(手塚治虫さんブラックジャックにあった、猫が何日もペロペロ舐めつづけて大怪我を治した、というのがお手本です。)
キャンの告知を一番先に共有した友人がジャン・サスポータスさんでした。かれが明後日日本にやってきます。
そして、彼との演奏が9月3日長野県信濃大町での原始感覚美術祭、9月9・10日の北海道岩見沢でのアール・ブリュットフォーラム、(with矢萩竜太郎)、そして9月17日の「いずるば」ワークショップ、ゲスト編第2回と続きます。
これもきっとご縁でしょうね。たとえ痺れで弾けなくなっても「なんとかする」。身を投げ出して、何かが来るのを待つことを共にしてくれる仲間です。
「いずるば」ワークショップゲスト編第1回でのミッシェルの最後の発言を我田引水して「即興」とは、どんな状況でも、なんとかして、よりよく生きる道を見つけることに他ならない、を結語としました。
この言葉を自分の口を通して聞くことが出来たのは、大いなる発見であり、とても嬉しいことでした。このなんでもない言葉を得るためにやってきたのだという感慨もありました。「いずるば」ワークショップを4回(第0回を含めて)、ゲスト編1回をやった末の宝物でした。
この言葉をステップとしてワークショップは第2期に入ります。さてどうなるのでしょう。
そしてその第一回目がジャン・サスポータスさんゲストです。世の中、実にうまく出来ています。流れに自然に沿っていけば自然に流れる。
ジャンさんが、ピナ・バウシュさんと40年やってきた経験も共有したいですね。ピナさんも最初のころは評判が悪かったりして、上演中トマトを投げられたりしたこともあったとか。そんなこともすべて知っている彼です。
ピナさんについて私にとって最高の批評は太田省吾さんの本「舞台と水」にありました。ピナさんは「肯定の文脈」から創作する、ということ。とかく日本では、否定を元に創作される傾向がありましたし、いまも自然にそうなっている場合が多い。そのあたりも聞いてみたいです。
ジャンさんは、デュッセルドルフオペラ・ワーグナー「タンホイザー」で振り付けを担当、初日だけでキャンセルとなったスキャンダルを御存じの方もいらっしゃるかも知れません。このタンホイザーは、今までの上演「伝統」に反して、ユダヤの視点で演出したもので、しかも、最初から収容所のシーンだったとのこと。当然、非難囂々で初日でキャンセル。
また、最近の彼の活動で大きなものは「ロミオとジュリエット」「ドン・キホーテ」などの名作演劇の共同演出です。二つとも絶讃されたとのこと。
また、フランス・ブロアでの障害者施設でのワークショップ、ブッパタールの自閉症施設でのワークショップ、そしてその自閉症施設40周年記念で始まったタンツテアター「私の城」。ここには、ピナダンサーに加えて、私・喜多直毅、皆藤千香子・深堀絵里が参加しています。初演・再演をかさね、来年は再々演の話もでています。
「いずるば」ワークショップでは、簡単に捉えることの出来ないジャン・サスポータスさんの活動・魅力を皆さんと共有したいです。