ミッシェル

 

ミッシェルの息(自らの心)が風となり鳥に姿を変え「使い」として天の意思を伝えます。木や草や皮を松脂の助けで擦り、軋み出る音が大地・海に共振・共鳴し、ニンの身体を通して答えます。羊の腸と馬の尻尾と松の脂で音を紡ぐ21世紀日本の民族楽器と化したテツのベースの倍音と雑音がその化学反応の触媒に心を砕きます。

風になったミッシェルの音は、音程を放棄し時空に偏在します、大地の轟きとなったニンの打楽器は音程を手にし、海をも同志とします。そして、時に打楽器、時に声になるテツの羊の倍音がその二つを繋ぐのです。

そうやって混じり合った音は沈黙のコトバとなり、バベルの塔を突き崩し山川草木を躍らせるのです。

その手本となりみんなを巻き込み、さらっていくのがトールさんです。

ミッシェル・ドネダとの話となると、余りにも膨大で、身近すぎていてなかなか書けないのが現実です。写真もヴィデオもCDもふんだんにあり過ぎます。何回も書いた気がして、何を書いて何を書いていないかが分かりません。(特に今の体調ではちょっとムリ)

そう言っては元も子もないので、思い出しつつ書いてみます。

出会いはバール・フィリップスさん。バールさんは人と人を出会わせる、そして何かを起こすのをプロデュースする天才です。そしてご自分はご自分の道があるため、影でその化学反応をニッコリしながら見ているのです。

この時もそうでした。

テツ、誰でも良いから気に入った共演者を(何人でも)連れてフランスのフェスティバルに来てくれますか?という突然の依頼。当時はやっとFAXの時代でした。私は30代後半、孤独な活動をコツコツしていました。共演者として選んだのは沢井一恵さん一人でした。

5th.seasonというグループを作り、フランス・ベルギー・スイスツアーをミュージックアクシオンのドミニク・レペコー(プロデューサー・ギタリスト 2017年逝去)とバールさんが創ってくれたのです。まだ景気の良い時代で航空券もヨーロッパ移動費・迎えも・送りもギャラもすべて込み込みという素晴らしい条件。

ナンシー・バンドゥーブルのホテルに着いてバールさんと再会、そこで紹介されたのがミッシェル・ドネダとアラン・ジュールでした。基本的にこの5人で演奏するのです。アランは バールとのデュオECM盤やリュック・フェラーリとの親交で知られていましたが、ミッシェルは全く知りませんでした。

素晴らしいメンバーと素晴らしいプロデューサーと素晴らしい聴衆に恵まれた中、インプロを思いっきりやれるという夢のような状況でした。日本の状況との差は天文学的と思えるほど違いました。

それからバールさん抜きでも、ミッシェルやアランとつき合いが始まりました。もちろんバールさんは歓迎してくれました。

ヨーロッパ諸国、日本、シンガポール、カナダ、とツアーをする間で親しくなっていったというより、初めから兄弟の様に親しかったのは、相性の良さなのでしょうか、前世からの因縁なのでしょうか?そういえば、フランスでの私のソロツアーをオーガナイズしてくれ、自らは運転手になったことも、ジャンと私のデュオをトゥールーズで引き受けてくれたこともありましたね~。尽きない話ですが、新たな旅のドキュメントはこの7月、みなさまの目の前で始まります。

 

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