ロジャー・ターナーの聴き方

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ドラムスの入っていないジャズを「室内楽的ジャズ」と言いますね。言い得て妙。ドラムスは室内用楽器ではないということです。

ちょっと客観的にドラムスのことを考えると:

本来は素手で叩いていたものでしょうが、「手が痛む」というわけか、「撥」を使って叩くのが常態。

いわゆるポピュラー系の音楽では必須の楽器であり、必須を越えて最早「制度」のようになっています。両手両足を使いシンバル系と太鼓系の打楽器を叩きます。 太鼓系の皮の音、シンバル系の金属音を人間工学にも実にうまく機能するようになっています。音楽スタジオでは花形。(コントラバスは特殊楽器扱い、ベースと言えば電気ベースです。)

 

ハイハットの発明がドラムセットを確立する大きな契機になったとのこと。軍楽隊の大太鼓にしても、チンドンにしても大太鼓と金属を一人で鳴らしていましたが、ハイハットによるtimeキープが大きなステップなのかも知れません。

サム・ウッドヤードの在籍していた頃のエリントン楽団はとりわけ好きですが、サムはよく手でドラムセットを叩き、肘で音程を調整したりしていました。アフリカの太鼓を思い浮かばせて、エリントンを歓ばせていました。

太鼓の皮を撥で叩くのにしても「スネア」太鼓は所謂ノイズ発生装置が設えてあり、皮の振動に金属のワイヤーをあてがって「さわり」の音を出します。そのスネアドラムを中心にドラムセットが組み立てられているのが通常です。「さわり」は日本の専売特許ではありません。古今東西存在しています。

さわりの音は人の心をザワザワさせ落ち着かなくなります。そこにシンバルの音が加わります。シンバルはトルコの軍楽隊由来のもので、軍隊の行進用です。人の心を「戦」「闘い」に持って行くのです。今でもシンバルのメーカーはトルコ。

かつてヨーロッパでも『スネアドラム』が禁止されたことがあるそうです。(ミッシェル・ドネダ説)
音や踊りで常軌を逸してしまった群衆のチカラは如何なる権力者も制御できず、非常に怖れていたのでしょう。

ジャズドラムでは、シンバルとスネアがずっと鳴り続けることが多い。まるで背中から追い立てるように迫ってきます。そのグルーブに乗ることがジャズ鑑賞の一歩でしょう。

お祭りでは太鼓が古今東西の花形。非日常への入り口です。シャーマンたちが使う楽器も太鼓と金属。鍛冶屋のトンテンカンは、シベリアでもフラメンコでもシャーマンの仕事。

自然の流れとして、室内楽器(しかも響きの良い部屋を必要とする)コントラバスとは本来むずかしい仲です。コントラバスが高次倍音を諦めてベースに徹してアンプ・PAなどで増幅するとリズムセクションとして最強の仲です。それはエレベの役割と似てきます。真空管アンプなど良いアンプでブーストしたベース音は実に気持ちいいです。

さて、ロジャー・ターナーです。

彼はドラムセットを演奏しますが、私もいつものように生のままで(しかもガット弦)楽しく、共演出来るのです。
私はドラムセット奏者とのつき合いがほとんど無いので大きな事は言えません(レギュラーでやったのが富樫雅彦さん、小山彰太さんといっても1〜2年間、数多くやったのが豊住芳三郎さんくらいです。やはりアンプが必要でした。)最近共演してアンプ無しでできたのが山本達久さんと橋本学さんとロジャー・ターナーさんです。

レ・クアン・ニンさんはもっと根本的にドラムセットを考え直した才人です。かつてはジャングルジムのような大きなセットを使っていましたが現在はバスドラムを横にしてする奏法を考案。そして現在は撥(スティック)を使いません。松脂を使い、擦る音を多用、いろいろな素材で(松ぼっくりなど)音を出すのです。

そうすると、アコースティックで他の楽器と音量が同じになるのに加え、メロディ楽器としての打楽器の可能性を一気に拡げたのです。

ロジャー・ターナーさんと共演するかどうかの話合いをしていた時にも、ニンさんのことが話題になりました。私は「ニンさんのような打楽器とならとても相性良く演奏できる」と言うと「私はニンさんのようには出来ないかも知れないけれど、あの方法は尊敬しているし、打楽器の考え方・共演の仕方として大いに参考にしています」と答えてくれました。本当に何に対しても真面目に対処してくれる巨匠です。

そんな視点からロジャー・ターナーさんの打楽器・ドラムセットを聴いてみるというのも鑑賞の手がかりにしてみたらどうでしょうか?

「お経とどかないジャズの騒音」と詠んだ山頭火さんもロジャー・ターナーには驚くことでしょう。

9月11日
出演:Roger Turner(perc.)
齋藤徹(contrabass)
喜多直毅(violin)
14:30開場 15:00開演
会場:公園通りクラシックス(渋谷)
http://koendoriclassics.com/
〒150-0042東京都渋谷区宇田川町19-5
東京山手教会B1F
※JR・東京メトロ・東急線・京王井の頭線渋谷駅下車徒歩8分
料金:予約¥3,000 当日¥3,500
ご予約・お問い合わせ:violin@nkita.net(喜多)

10月6日
田園調布本町「いずるば」
ロジャー・ターナー、喜多直毅、齋藤徹
ゲスト
矢萩竜太郎・ジャッキージョブ(ダンス)

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