田中悠美子さんに、この国の女性のもつ底知れない「何か」を体感したセッションでした。それは沢井一恵さんにも感じるものと同質のもの。おふたりとも体格はとても小柄ですが、舞台では巨人に見えます。とても並の男が立ち向かえるものではない何か。
ジャックは絶好調をキープしています。この日は新大久保から下北沢まで自転車出勤。いままで見えなかった日本をいろいろと発見してたいへん歓んでいるようです。本日も昨日発見した足ミュートを使って様々な音の実験を楽しんでいます。また、店内にグランドのトイピアノを発見、すかさずセッティング。第2部に使っていました。良い音だ。
彼は私がいままで出会った人の中でも大変頭の回転が早く、分析力、理解力、想像力とも素晴らしい。そして人生を信じて人を信じています。それを反映するようなピアノ演奏は曖昧なところがなくクッキリハッキリとして、歓びに満ちています。そんな彼が田中悠美子という異質で巨大な個性に出会って面白くないはずがありません。終始ゴキゲンなセッションでした。
私は高田和子さんのグループ「糸」(高田和子・田中悠美子・西陽子・石川高・神田佳子)の京都公演で作曲・演奏を頼まれました。その時の1曲が今もよく演奏する「糸」です。また、アサヒビール音楽講座(港大尋リーダー)でOKIさんらと一緒に参加。現代音楽をデュオでやった記憶があります(私があまり上手く弾けずにご迷惑をおかけしたような記憶です。)ほがらかで素晴らしい音楽家でしたが、今回のような底なしの闇(?)の部分を感じたことはありませんでした。
弦楽器同士の親和性、日本語を使っている親和性(周波数の一致)などからでしょうか、同じ音質・倍音・破裂音・アタック・ノイズを楽しみました。それはあまりに面白く集中したときは、(申し訳なくも)ジャックを置いてきぼりして進むこともありました。
ヨーロッパ人とのインプロの経験が多くなり親しい友人も増えてくるとどうしてもその美学に染まってしまいがちになります。その美学の中でのインプロだけでもやり甲斐のある素晴らしい経験です。しかし、こうやって悠美子さんのおかげで、私の出自の「何か」に触れるとヨーロッパインプロの美学に囚われていた自分を見いだしました。
一般論で言うのはとてもキケンですが、ジャックさんに、普通のヨーロッパ人にないものも感じています。個人と神との一対一というよりは、アニミスティックなものを感じることがあるのです。ちょっとそんな話もしましたが、自分もそう思うとおっしゃっていました。インプロを大事な仕事としている理由にも関係しているかもしれません。
さて本日はツアー中日。深山・マクイーン・時田さんという日本とオーストラリアを出自として持つミュージシャンとの共演です。私もお会いするのが初めてです。十七絃(低音箏)を持って来るとのこと。そして彼女は一恵さんの強力な推薦なのです。果たしてどんなケミストリーになるのでしょうか。ドキドキします。
7月20日(水)フタリ ゲスト:マクイーン時田 深山(十七絃)
7月21日(木)七針 ゲスト:久保田晶子(琵琶)
7月22日(金)茶会記 ゲスト:かみむら泰一(サックス)
7月23日(土)Candy ゲスト:黒田鈴尊(尺八)