かみむら泰一・齋藤徹 Duo 「Choros & Improvisation LIVE」(TRV-019)発売記念LIVE
根を持つこと・羽根をもつこと
その両方を欲しがること、この矛盾するふたつをそのまま欲しいのです。身体と頭の中で、時に相手が邪魔だと闘い、時に、出来るかも知れないと、讃え合い、時に、そんなことは出来ぬと慰めあっています。
ドイツで入院中のハンナ・アーレントの概念「労働」「仕事」「活動」から発想しています。労働は生き延びるためのサバイバル行為ですのでここでは除外。「仕事」は自分の人生の長さを超えたものと同一になりたい願望の行為、「活動」は常に移動しつつ、無意味なことをやり続ける。
コントラバスでは、バッハを、ショーロを、ジャズを、先人達のソロをリファレンスし、自らの伝統、他者の伝統をリスペクトしします。そこに帰属したい、わずかばかりの自分の人生を、蕩々と、脈々と流れるものの中に1㍉で良いので刻みたい。知恵の詰まった素晴らしい楽器を弾きたい。そんな「根」をもちたい願望。毎日じっくりと音楽に取り組み、先祖・家族を慈しみ、日々少しずつ成長し満足する生活。
一方、すべての伝統・知恵を無視し、移動し(逃げまくり)自らの痕跡を消しまくり、人生を暇つぶしとし、自分がいてもいなくても変わらないとし、意味や責任から遠ざかる。楽器など何でも良い。弦だって、松脂だって、弓だってなんでもいいのだ。時が来ればあっさり綺麗にオサラバさ。そんな「羽根」を持ちたい願望。インプロバイザーの多くが旅を栖(すみか)としています。
このCDでの演奏に関して言えば、ショーロを演奏すること・即興することと同じかと思います。
私たちはブラジル音楽の専門家になりたいわけではありません。貢献したいわけでもありません。最近の私で言えば、インプロをやり、ダンスや演劇に作曲を提供し・演奏し、バッハを弾き、ショーロを弾き、泰一さんで言えば、オーネットを演奏し、オリジナルを演奏し、インプロをやり、さまざまなグループでサポートをしている現実があります。
自分がどこにいて、なにをやっているかのマッピングを計り、優先順位を慎重に選び、みずからの全音楽経験を活かし、演奏します。そこには嘘偽りはありません。それをこそ手がかりに演奏するしかないのです。
この2日間のリリース記念LIVEで、何を見つけるか?余裕を残しては見つかるものも隠れて見えません。また、発見は一方通行ではなく、共演者と、また、聴衆との相互通行でしか有り得ない。
音質に対して、より深く慎重に丁寧に探索し、身体性や呼吸に意識を持っていき、かつ、本番ではすべてをうっちゃり、身を投げ出す。
ソウイウモノニワタシハナリタイ。
6月17日(金)明大前キッドアイラックアートホール 19:30開場 20:00開演 前売り・予約 2500円 当日 3000円、 世田谷区松原2-43-11 電話03-3322-5564
6月18日(土)稲毛 Candy 19:30開場 20:00開演 前売り・予約 2500円 当日 3000円、
千葉市稲毛区稲毛東3-10-1 043-246-7726
私も当日午前中まで予約承ります。どうぞご来場のご検討よろしくお願い申し上げます。