背中を押してくれるもの・・
こういう人生を送っていると、心身共に弱った時、背中を押してくれるものは、美味しいものや、温泉や、呑み会ではなく、若い世代のハツラツとした姿勢です。
実は心身ともほとほと弱っていたのですが、DVD「ダンスとであって 矢萩竜太郎10番勝負!」リリース記念LIVE@「いずるば」と翌日のかみむら泰一さんとの録音マスタリングで少々持ち直しております。
竜太郎さんは見事なジャイアントステップを遂げていました。「ねえねえアニキ、今日から戦隊ものポーズはやらないよ、やりたくなったらカラオケでやるから」と堂々と宣言。戦隊ものポーズというのは、赤レンジャーとか、正義のヒーロー達の見栄を切るポーズのことです。竜太郎さんは困ったときによくそう言うポーズが出てきていたのです。
深読みすると、それは日常での差別やイジメに対する彼なりの反発とも取れます。あんなヤツらはやっつけてやる!という素直なポーズでもあるとも感じていました。その意味では興味深い事です。
しか~~~し:
そのポーズがパフォーマンスの中で出てくると、制限された事しか表現できないし、拡がらない、繋がらないので、「あれは止めようよ」とずっと提案してきていました。でもなかなか止まない。特にアイディアが湧かずに困ったときにそのポーズと共に悪循環に陥ったことがありました。
しか~~し、今回、自らがパフォーマンス前に「やらないよ」と宣言したのです。そして、本当に実践しました。その分、身体の力が抜けて柔軟で伸びやかなダンスへと昇華して行きました。
共演のジャワ舞踊の佐草夏美さんの静謐な動きに、竜太郎さんは時にコントラストを強め、時に夏美さんを救い、時にミュージシャン(熊坂路得子さんと私)を救ってくれていました。しかし、片側通行ではありえないので、みんなお互い様に刺激し合って、救いあったのでしょうね。このカルテットはたいへん良い相性なのです。
竜太郎さんは、こういう大きな飛躍を何の前触れもなくやってしまうのです。この変化に気がついた聴衆が何人もいました。自らの発見とともに彼の発見を共有したのでしょう。発見は常に双方向です。
そういうことが弱った私の背中を押してくれます。
翌日、かみむら泰一さんとの録音マスタリングに出かけました。抜けるような青空。まだ頭も身体も整っていませんが、録音時(キッドアイラックホール)の充実感は覚えていますので、きっと楽しいだろうと思って臨んだマスタリングでした。
泰一さんは十分に聴き込んできていて、CDの総合アイディアも細部の工夫案もできています。私はニコニコして日向ぼっこしながら、歓んでそれに従い、嬉々として受け入れるのみでよかったのです。
思えば、1年半前に実に丁寧なオファーを受けて始まったデュオです。話合いをゆっくりと進めてアイディアを練ってここまで来ました。彼が物語の主で、私は切っ掛けを与える役割と言っても良いでしょう。彼がトライしたいことに対して切っ掛けとなるアイディアや人選を提案しいくつものライブを経験して来ました。
ともかく「求める」気持ちがなくては何も始まりません。ちょっと長く生きている私が何か言って、求めている人だけがそれに反応できるのです。求めていなければ、素通りするだけ。物事は、望む・願う意思の強さで回っていきます。良く言われることですが、「良い先生はいない、良い生徒がいるだけ」ということでしょう。泰一さんとのデュオは、ゆっくり進んでいるようで、実は最速だったりして・・・
ピシンギーニャとラセルダの馥郁たるショーロが5曲、技巧的ショーロ2曲(デスバイラーダ、鱈の骨)、即興1曲、泰一オリジナル1曲(「縄文」)
とびっっっっきりの音で録音されていました。実は、サックスは音程がムズカシイのですが、泰一さんは丁寧に音程を取っています。楽器の音に関しても一切の妥協をせずに、マウスピース、リードにも細心の注意をむけています。それは共演者(この場合、私)の音を聴く姿勢にも反映しています。そしてその音がそのまま市村隼人さんの感性でバッチリ録音されています。ああ、これがテナーサックスの音だよな~、ソプラノはこうでなきゃ、という発見がたくさんあります。
ベースもすばらしく良い音で残っています。この時はG,D弦がプレーンガット(ダミアン)、A,E弦が銀巻きガット(toro)でした。キッドアイラックホールの音響の良さは毎度お馴染みですよね。すべての音色、音域のことをGAMUTというそうです。この録音はまさにそれでした。
こうやって2日間背中を押していただきました。直毅さんとの新CDでも直毅さんの発展・深化を本当に嬉しく思いました。2月3月と収穫祭のように作品がドンドンと出来ていきます。4月5月とヨーロッパ各地で直毅さんを紹介を兼ねて演奏できるのでそれも楽しみです。
少しずつ回復していきます。あざーす。
DVD「ダンスとであって 竜太郎10番勝負!」(IZRB-01)は定価1500円で販売いたします。
お問い合わせはstudio-info@izuruba.jpまで。 私も受け付けま~す。
かみむらさんとのCDはジャケット案、ライナー案が揃い次第製作に入ります。私がヨーロッパに行っている間に仕上り、帰国後、6月にはリリース記念LIVEが出来ると思います。乞うご期待!
直毅さんとのCDは3月11日 ポレポレ坐でのヨーロッパ壮行・レコ発記念LIVEで発売します。