これは「ロープ」です。

IMG_1073 ピクチャ 2 シンフォニックチラシ

これは「弦」というより「綱」ですな。ライブハウスのバッハ@エアジン

エアジン恒例となったライブハウスでのバッハ企画。3回目の出演になります。手強いに決まっています。

店主の梅本さんはケルンで確固たる地位を得、一生そのまま豊かで楽しい音楽生活を過ごすことが出来たトランペッターでした。突然、エアジンを引き継ぐことになり帰国。自ら音を出す人間が、毎日毎日他人のジャズ演奏を聴いて過ごさねばならないのは、考えて見れば拷問に近いでしょう。それを30年以上やってきているのですから本当に有り難く、感謝しかありません。

梅本さんは、帰国直後、何か新しいやり方はないかとあちこちを探索。初台「騒」ガヤにも来て、そのやり方にも共感。当時「騒」でやっていた生活向上委員会のメンバー、板倉克行さん、そして私が、モダンジャズの名店エアジンで演奏するようになりました。そりゃ最初は非難囂々。対策としてフリー系隔離ということで日曜に限定して、モダンジャズファン対応をしていました。すずきいずみさんと「騒」で呑まされ入院、入院先からエアジンに出演したこともありました。(天野主税・森順治さんとトリオ)

ヨーロッパの空気をしっている梅本さんの感覚ではフリーは当たり前。当時のケルンではシュトックハウゼンやヘンツエ、ケージなどが普通に演奏されていました。いまやエアジンでのインプロは当たり前になりましたね。(どちらかというとモダン系の方が少ないかも。)

梅本さんならではの企画としてはクラシック音楽企画も続いています。30年前から、私も参加、勉強しました。ストラビンスキー「兵士の物語」には一番苦労しました。小節ごとに拍子が変わる楽譜、指揮者を見ながらの演奏など慣れないことばかりでした。指揮者を見ている振りをして実は暗譜してしまったり。

「動物の謝肉祭」、「ピーターと狼」などもやりましたね。梅本さんが連れてくるミュージシャンは凄腕の人ばかりで大変有り難かったです。凄腕の人は必ず謙虚で偉そうではなく私のことも認めてくれていました。

そして、神奈川フィルハーモニー管弦楽団との演奏というとんでもない機会も与えてくれました。「なんか書いてやってよ」という梅本さんの気楽な問いかけに「ハイ」と訳がわからず答えてしまいました。長野の山に籠もりもしました。「ストーンアウト」(ソロ:沢井一恵・私)「タンゴエクリプス」(ソロ:小松亮太・私)「invitation」(アンコール、私もオケのコントラバスセクションに並びました。)の3曲。徳永 洋明さんに全面的に協力してもらってなんとかやり遂げました。(翌年も「ストーンアウト」は同メンバーで再演。)

リハーサルは2回、当日1回のみ。(1回のリハに ウン十万!掛かる)、時間が来たらどんなに乗っていてもリハは中断、指揮者が何と言っても偉く、メンバーは交替可能という構造・だからお辞儀しない、毎日のようにいろいろな演奏をしなければならないメンバー、100名の演奏家の間で時差がある、コントラバスは運ばなくて良いのだ、など初体験ばかり。

しかしこの時の体験で一番大きかったのは、私には「西洋音楽」が結局合わないのではないか、ということでした。西洋音楽の形式の1つの頂点であるフルオーケストラを経験したことでそれが分かったのです。おかげさまでいわれのないクラシック・現代音楽コンプレックスからは逃れることが出来ました。これって結構ありがたいことです。

その次の梅本さんクラシック系企画がライブハウスでのバッハです。ライブハウスに出演する演奏家も音大卒の人もドンドン増えてきて、ジャズだクラシックだというような時代では無くなってきています。日本もようやく「サードストリーム」の時代に追いついてきたのではないかと思うこともあります。

私のコントラバス観も変化してきていて、このところはガット弦など古楽など、かつての響きへの関心がましてきています。クラシックやジャズはよほどのことがないと自ら演奏しませんが、バッハは例外です。

今回の打診にどうやって答えようかと思いを巡らし、オールプレーンガット弦でのバッハにしようと(無謀にも)考えました。一番太い弦などはほとんど「ロープ・綱」です。もともとコントラバスは3弦だったのでこの太い綱が伝統のものとは言えませんが、ともかくこれでやってみます。なにしろ材料をたくさん使うので非常に高価!です。これ1本で、安いギターなら買えてしまいます。高価の割にはピッチカートはほとんど不可。

でもこれでいいのだ。これでやってみます。忘れられた響きを堪能できることは請け合いです。(オールプレインガット弦コントラバスは、田嶋真佐雄さんがやっています。彼のグループ「倍音の森」は要注目です。)こんな音聴いたことないでしょう。世界的にもともかく超珍しいのです。

バッハ無伴奏チェロ組曲一番〜五番までは(六番は間に合わないかも)やってみます。

世のコントラバス名人たちは、チェロとおなじ調性でやっています。(ゲイリー・カー、フランソワ・ラバト、ダンシュン、などなど)もちろん彼らは金属弦しかもソロチューニングです。ほとんどチェロと変わらない見事な演奏をしています。

バッハの時代の音楽は、調性に特別な意味があるという説も、基音も今とは違うことも知っています。

しかし、今回、わたしはコントラバスの低音に特化した移調ものでやってみる予定です。二番はE短調で最低弦を活かしまくり、四番も最低音程あたりをもぞもぞします。ともかく低いです。要注意。

3月25日エアジンです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です