3月15日の公演の隠しテーマがラ・フォリア。いろいろと資料を調べております。ラ・フォリアとは「常軌を逸した」「狂気」という意味があります。そして15世紀にスペインで発祥した特定のコード進行を伴う楽曲シリーズでもあります。また、作曲家八村義夫さん未完の交響曲が「ラ・フォリア」と名づけられていました。八村さんの著作も「ラ・フォリア、ひとつの音に世界を見、一つの曲に自らを開く」(草思社)というタイトルでした。
このところずっとさまざまなラ・フォリアを聴いていますが、確かに耳にこびりつく音楽です。クラシック音楽的に言えばコレルリのバイオリン変奏曲が一番有名でしょう。また、マラン・マレのまとめた曲としても知られています。
古代ギリシャの音楽やタランテラで有名なグレゴリオ・パニアグア率いるアトリウム・ムジケー・マドリッドの「ラ・フォリア」は本当に狂気と隣り合わせを狙っています。シタールやタブラのインド音楽が出てくると思えば、オートバイのノイズまで超優秀録音で刻まれています。(私がパニアグアを知ったのが長岡鉄男さんのA級外盤シリーズでした。)
今思えば、インド音楽をスペイン古楽のルートと捉えることはある程度認知されています。注目すべき諸作を撮影しつづけている映画監督トニーガトリフの諸作はアラブとフラメンコを同系統と見ることを動機としています。ロマの流れです。
グレゴリオ・パニアグアの流れにホルディ・サヴァールもいて、サヴァールから派生するのが、ガンバ奏者のパンドルフォであり、ファミ・アルカイでしょう。パンドルフォさんはマラン・マレやバッハをガンバで再現する功績が大きいし、ファミさんはスペイン古楽とフラメンコの共演を試みていて大変興味深いです。
サヴァールさんは現存する世界の音楽家のなかでも最重要の音楽家の1人であり、ニッポンやケルト、南米にもいたる興味の大きさ、そして今年、スペイン国家音楽賞(副賞3万ユーロ)を、スペインの音楽・文化政策への抗議として拒否したというミュージシャンシップを持つ真の大物です。
南米でのラ・フォリアはサヴァールとともにEnsemble Elymaもかなり突っ込んで録音しています。このフォリアがアリエル・ラミレスのミサ・クリオージャ、メルセデス・ソーサに直接繋がっているのだと推測します。ラ・フォリアがラ・バンバにも聞こえます。
パニアグア、サヴァール、ファミとつながるスペインクラシック音楽の流れは大河のごときものであり、西欧クラシック音楽史のオルタナティブとして非常に大事です。
そのあたりを3月15日の公演の音楽隠しテーマとしてジャンさん、志保さん、直毅さんとやってみたいと思っております。うううう楽しみだ!