カムルル・フシン(マレー伝統音楽家)セッション@ポレポレ坐

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カムルル・フシン(マレー伝統音楽家)セッション@ポレポレ坐 その1

私の音楽活動は空間的に言うと、東西方向の「ユーラシアンエコーズ」と南北方向の「オンバクヒタム」に分かれるように思います。昨年の21年ぶりのユーラシアンエコーズ第2章や今年7月のソウル国立劇場での姜垠一公演、そしてセバスチャン・グラムスとのDouble the double bass in Japanは東西ものでした。日韓ものでも、日韓・韓日の2国間関係にせず、大きくユーラシア(ユーロ・アジア)と捉えようという企画です。そして、期せずして二人のフラメンコダンサーが入った先日のセバスチャンツアーは、ユーラシア大陸の西の端まで触れることが出来たのかもしれません。

そして、上原亜季さん・さとうじゅんこさんの計らいで11月6日にポレポレ坐で「カムルル・フシン」さんとのセッションに参加します。これは久しぶりの「南北もの」です。前回はシンガポールでのアトック・クーニン(ザイの父親)引退コンサートで、これも「オンバク・ヒタム」と名づけられていました。田中泯・螺鈿隊・コントラバストリオ羊で座高円寺での公演、福岡アジア美術館オープニングイヴェント、岡本太郎美術館土方巽展内でのイヴェント、瀬尾高志との北海道ツアーもその一環でした。

元々は、ユーラシアンエコーズの延長かと思っていたシンガポールでの連続公演が発端でした。私に全権を任され、ミッシェル・ドネダ、アラン・ジュールというフランス即興音楽家、鄭喆祺(チョンチュルギ)・金正国(キムジョング)という韓国シャーマン系伝統音楽家、そして沢井一恵、山崎広太という日本の音楽家・ダンサーを招いた催しでした。

せっかくシンガポールにいるのだから、と現地の表現者にも参加してもらいたいという申し出に推薦されたのが、ザイ・クーニンとアブラヒム・イフェンディさんでした。実施した劇場(サブステーション)の楽屋に「住んで」いた動物的な眼を光らせるザイと出会いました。マレーシャーマン家族出身のザイは音楽・美術・詩・演劇・ダンスなんでもやっていました。彼の父が「ああいう人(私)と付き合いなさい」というシャーマンらしい謎めいたアドバイスもあったとかで、長いつきあいが始まりました。

シンガポールでは「ユーラシア」という言葉があまり好ましいニュアンスではないと言うこともあり、ユーラシアンというタイトルは使いませんでした。結果的には良かったのです。おかげで、全く違う次元の「オンバク・ヒタム」というシリーズが生まれました。

そもそも私の家ではアジアの匂いがしていました。長崎生まれの祖父が東亜同文書院出身で、中国、仏印(フランス領インドシナ)、パキスタンなどで仕事をしていました。私の使ったピアノはSAIGONという名前をもつフランス製(鍵盤は象牙)、独特のパーコレーターでフランス式コーヒーも時々出ていました。タイなどからも客人が来たり、祖父が李白や陶淵明の漢詩を吟じていたり。大学時代に韓国語を学習したりしたのもそういう影響があったのだろうと思います。

アカデミズムから逃げるように音楽の世界に入っても、アジアへの親しみは続いていて韓国伝統音楽にドップリ浸かったこともありました。国際交流基金の派遣で沢井一恵・板橋文夫・広木光一と(意外なメンバーでしょ?)韓国・タイ・ラオスを回ったツアーも多くの想い出があります。(続)

 

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