Double the double bass in Japan 2014
第十回
10月21日(火)
赤坂ドイツ文化センター。ゲスト沢井一恵・久田舜一郎・喜多直毅。
いろいろと深い因縁を感じ、私の将来を占いさえする会になるのではないか、と思っています。一恵さん、舜一郎さんとの出会いや共演を書いたらそれぞれ一冊ずつになりそうです。そのお二人に、今一番の共演者・喜多直毅さんがはいります。私にとって特別な日と言えます。
ます、伝統と現代ということに触れざるを得ません。「伝統とは異端と異端が細い線でつながったもの」という仮説がこの二人のことを思うと真実味を帯びます。私にとっての大きな大きなテーマでもあります。セレブ気取りの伝統社会はどうしても馴染めません。そんなことでは決して「伝統」は継承できないでしょう。
久田舜一郎さんの「道成寺」の乱拍子は驚嘆を通り越し、呆れてしまいました。国立能楽堂のウイークデイの昼公演でこのような濃厚な即興演奏が繰り広げられているとは真に驚きでした。
気合いを入れすぎて?心臓の手術を何回もしている久田さん、愛すべきキャラクターと能のひたむきな求道者が同居する稀な人。
一恵さんというと「宿命」とか「業」とかを連想してしまいます。あの華奢な身体に、あのような演奏。何かとてつもなく大きく恐ろしい存在の何者かが、彼女の身体を借りて演奏しているとしか思えない時があります。しかも、その大本の存在は、いつも大きな賭を好みます。そこそこの成功などはモンダイにしません。
すべてがうまく機能して「乗っている」時の一恵さんには、誰も近づけません。共演者もはじき飛ばされ、名誉ある傍観者になるしか有りません。そしてその場にいることだけで至福になるのです。多くの人達が、一恵さんに夢を託し、多くの人達が一恵さんで人生を変えてしまいます。その引力・魅力も本人のあずかり知らぬものなのでしょう。
伝統の世界でトップに居るお二人のような人が最も謙虚で、しかも果敢な冒険を好み、つまらぬ成功にこだわりません。そういうすばらしく、かつ、おそろしい「伝統」そして「異端」、そうしか生きられない覚悟、それを若き天才喜多直毅さんにも体感していただきたい、そして多くの聴衆と時間・空間を共有したい気持ちで一杯です。
10月21日(火)18:30open / 19:00start
会場:ドイツ文化会館ホール
東京都港区赤坂7-5-56
出演:セバスチャン・グラムス(コントラバス)・齋藤徹(コントラバス)
沢井一恵(17絃)久田舜一郎(小鼓)喜多直毅(バイオリン)
料金:予約3,000円 / 当日3,500円
予約: Tel:03-3584-3201 Mail:info@tokyo.goethe.org
助成:ドイツ連邦共和国外務省
協力:東京ドイツ文化センター