竜太郎10番勝負!2本目の一本締め、無事終了
無事、どころではなく、新たな地平をどこまでも切り開くような展開になりました。竜太郎さんは興奮を隠しきれず、夕食時もずっとハイでした。こんな竜太郎さんを見るのは初めてです。スゴイです。
ゲストは下手から元井美智子(箏)・村上洋司(即興演劇)・南雲麻衣(ダンス)・松本泰子(歌)・オオタマル(ギター・打楽器)・黒田静鏡(尺八)・喜多直毅(ヴァイオリン)・私・田嶋真佐雄(コントラバス)・田辺和弘(コントラバス)が聴衆と対面するように椅子に座ります。
この方法は、ジャン・サスポータスさんとの時から何となく採用する方法です。出演者が皆、聴衆と対面するように座り、自由に出たり入ったりする。やらないときもいつも参加している気持ちを持続しつつ、いつでも参加できる利点があります。
(ジャンさんは何と言っても椅子のプロ?です。ピナ・バウシュの代表作「カフェ・ミュラー」での冒頭の椅子さばきシーンはジャンさんの独壇場で、もう世界各国で400回以上の公演をしていて、アルモドバル監督のアカデミー賞受賞作品「Talk to her」の冒頭でもジャンさんのアップが印象的でした。彼こそミスター・カフェ・ミュラー!)
実は、ゲストの数が多すぎて、お二人の方には残念ながら辞退していただくという不測の事態が裏ではありました。そのお二人も客席にいらっしゃるので、なんとか良い時間を作らねば、一応のリーダーとしては責任感がヒシヒシ。
その日に集まった総勢11名をまとめようとするのは土台無理です。ひたすら信じることに徹する徹チャンになるしかありません。やっとそれがそこそこできるようになりました。そして、今、「機」は熟しているのだな~と痛感しました。私の周りで起こっていることが充実しているのだ、と感謝するしかありません。
喜多直毅さんの充実、コントラバスアンサンブルで培った田嶋・田辺氏のオープンさ、松本泰子・さとうじゅんこ両氏の歌・声のチカラ(「うたをさがして」のおかげ)、オオタマル・村上さん・元井さんが私の近年の活動に興味を持っていてくれること、そして竜太郎さんの進歩とひらめき、「いずるば」を育て守ってきたマダム芳子さんの願い、すべてが、これしかないというケミストリーを起こしているのでした。私はそこにいるだけでいいのです。トラベシアミッション。
さて、当日の模様を思い出す限り:
ゲストが三々五々に集まり、初対面の人を紹介しあったり、ヤーヤーヤーと懐かしの対面があったりして準備。私はいろいろと策略を練りますが、すべて大ざっぱにしておきます。臨機応変・君子豹変・不易流行・自由奔放・羯諦羯諦・波羅羯諦・波羅僧羯諦・会者定離。ともかくタブララサで望むしか無い、欲はジャマジャマジャマ。
竜太郎さんの提案で出演者11名、手を合わせて「オーー!」。そんな様子も集まってきている聴衆に隠さずやります。(公開リハーサルの良いところですね。)
先週はジャンさんがいらっしゃったのでジャンさん体操を出演者・聴衆一緒にやって空間を一つにしたのですが、今回どうしよう?そうだ!「警しつ」をみんなでやってみました。春日大社・若宮宮の声の出し方です。とまどう人もいましたが、敢行。まずまずの出だし。
まずは竜太郎さんソロ。中腰から回転する動き、コンテンポラリー系のダンスでよく見られるカタチです。竜太郎さんはこういうところも無意識に吸収しているのだな、と感心。うずうずしているような南雲麻衣さんに参加してもらい、シンクロも自然に起こり良い感じになったところで箏・尺八の順に入ってもらいました。
邦楽器の音色のチカラはミームとなって日本人だれもの細胞に入っているのでしょう。麻衣さんは尺八の音は聞こえなかったと言いますが、どうしてどうして、しっかり共演できているようにしか見えません。「聞こえる」って何なのでしょう?
そこに直毅さん、真佐雄さん、泰子さん、と徐々に参加してもらいます。大勢になってもうるさくない状態が続きます。みんなダンスを観ながらやっています。うまくいく大きな要因でしょう。「焦点を合わさずに観る・ミラーニューロンを意識する」即興セッションには大事なことです。
あっと言う間に、全体の「気」がトップまで行ってしまいました。1回目の成功を無意識に思っていて、5分~10分のセッションが切れて繋がるのかと思っていましたが、この「気」のありようでは無理。それをいち早く察知して行動に出たのが竜太郎さん!でした。さすがです。詩的な言葉を発し続けます。「今日は切れ目無しに行くしかないっしょ」という合図でした。村上さんを促してここから即興演劇に入ってもらいました。
もう、ここからはフルで突っ走るしかありません。村上さんが先週同様白い大きな布をもって登場。この白い布は私には太田省吾さんの「更地」を連想させます。ゼンブナクシテミル。(会場には転形劇場の井上弘久さんもいらっしゃいました。)
出演者全員でハックメオ(ベトナムの指鈴)を鳴らし竜太郎・村上さんを段々に囲みます。演奏者が楽器から離れることが出来ます。楽器=囚われからの解放。良い演奏をしようという囚われ、自分のその時点での興味をやりたいという囚われ・・・・。次は全員で銅鑼合奏になります。銅鑼が行き渡らない人は楽器をやったり踊ったり歌ったり。自由自在。ここで傑作シーンが一つ生まれました。巨体の田辺和弘さんが布を頭からかぶりノシノシと舞台を横切ります。私には「異形の花嫁」に見えました。銅鑼の合奏では韓国伝統音楽のリズムを使用。韓国伝統音楽と即興演奏に造詣の深い尺八黒田さんが上にメロディを乗せていきます。テーグムと違うアプローチ。面白いな~。
コントラバス三台がゴンドラのように横たえながら動きだし竜太郎さんを囲みます。ベースアンサンブル弦311でジャンさんとやったシーンを思い出しますが、まったくちがうアプローチです。ジャンさんがコントラバスの海に埋没していくのに対し竜太郎さんは言葉を発しながら空へ向かって上っていくようでした。
ここまでフルスロットルで踊ってきた竜太郎さんに少し休んでもらい(このタイミングは私の大事な役割です)コントラバス3本+歌+バイオリンでE♭チューニングの合奏で落ち着きを取り戻し、南雲麻衣さん登場。手をさする、身体をさする、足を床にさする、手を振る、など音にならない音をみんなで出します。それに対し見事なダンスを披露してくれました。スバラシ。息が整った竜太郎さんに再び入ってもらいダンスデュオ、最初のデュオをちがう地平です。私が竜太郎さんの両目をふさぎ、両耳をふさぐという動作を繰り返しました。
前回の佐草夏美さん(ジャワ舞踊)がそうだったように、今回は南雲麻衣さんがセッションの大きな特徴になっていました。聞こえるとは、音とは、音楽とは、ダンスとは、楽器とは、コミュニケーションとは、繋がるとは?さまざまな問いをダンスで、存在で、問いかけてくれました。ありがとうございました!(会場には、聾の人、ダウン症の人、障がいを持つ方、さまざまにいらっしゃいました。)
このあたりで、オオタマルさんをフィーチャーしてサンバに、と閃き、それとなく促しました。2ビートが自然に全体を包んだあたりで、やおら尺八が村祭りの節を歌い出しました。もう、サンバどころではありません。全員が村祭りになります。やっぱりサンバは外国の文化でした。しかし、オオタマルさんもサンバに固執せず、村祭りをやっています。いい感じです。
その後の展開はあまり覚えていませんが、祭りの後は、静かに終わる(日常に帰る)しかありません。あろうことか、竜太郎さんが切腹の動作を始めました。ええ~っ、どーするの?と緊張感が頂点に達したとき「な~んちゃって!」。大爆笑でした。箏・尺八という和の音が染みこんでの切腹だったのでしょうか?思えば凄いテーマでもあります。
簡単な打ち上げで「舟唄」を泰子さんが仕切ってくれ、竜太郎さんが「枇杷のうた」を披露。立ち去りがたい日でした。
もうこれは「いずるば」フェスティバルです。