壮弦塾 アートクラス
平野壮弦さんは自在な書家であると共に、天性の「教師」であります。実際に学校の教師をされていましたが、あまりの現状のため退職したと聞きます。それは本来の教師の役割が果たせなかったため、いたたまれなかったのだろうと想像します。その後、書家として活躍されています。アート系の啓蒙だけでなくデザイン書では日韓ワールドカップのポスターや、麒麟麦酒や新潟の銘酒のラベル、などもやっていますので多くの人が知らずに目にしたことがあるわけです。
彼は私のCD「パナリ」(ジャバラレーベル・西表島の海岸で録音)を特に愛好していただいていて、「すりきれるまで」聴いていると言います。私などはマスタリングまで聴いて、それからほとんど聴いてないというのに・・・確実に世界で一番このCDを聴いてくださっていますね。
その彼が教師の本領を発揮しているのが壮弦塾です。そのアートクラスにおじゃましました。
お付き合いいただいてもう数年になりますが、「どの程度まで言って良いのか、やって良いのか?」が分かってきましたので、今年はとても楽に出来ました。
たとえば、筆に墨をつけないで書く→その時の音を聞き合う→私も共演する→その紙を破る→その音を味わう→その断片(音が詰まっている)を投げる、なんてことをやります。自己「表現しないこと」「技術を使わないこと」などは、演奏家よりも分かってくれている様子。日頃の壮弦さんの薫陶でしょう。
誰でも出来る、ということで楽器の横引きを受講者一人一人とデュエットをやってみたら、これが大受けでした。他にやりたいことも大分残っていましたが、全員とデュエットすることに変更。20人以上とそれぞれの数だけの音が生まれました。
DVD製作が山場の昨年8月「ユーラシアンエコーズ第2章」の時のロビーを飾ってくれた巨大な書も壮弦さんの作です。ちょっとおどけたり、強さも弱さも正直に出す・・・ありのまま、それが最良の教師なのでしょう。