昨日の続きになります。
ジャン・ルイ・バローの自伝「明日への贈り物」(新潮社)も古本で入手しました。想像通り、短いですが、アルトーとの暖かい交流の模様と鋭い分析が綴られていました。「身体」に共通する激しい関心をもつアルトーとバロー。アルトーはメキシコへ。バローは能へ行きました。パントマイムから、能の所作への興味は容易に想像できます。勅使河原三郎さんのダンスの基本はパントマイムだと聞きました。
アルトーはメキシコで麻薬性の薬草を試します。私の世代で言うと、学生時代にカルロス・カスタネダの本が大流行しました。訳者を囲んだ会がホビット村であったり、つまらない日常の中、訳が次々とでるのを待ち望んでいました。この種のサボテンはアルトーの身体には必要だったのでしょう。鶴見和子さんのゼミでも課題図書のような扱いでした。柳田国男から南方熊楠へ、水俣病問題へ移行する時でした。基本的に社会学でのパラダイム理解のために読んでいたようですが、私は、現在の私に直結する「感覚とは何?」「視点とは?」「常識とは?」「世の中の捉え方とは?」という題材として読んでいました。ジャン・サスポータスも私と同じような興味で読んでいたと言います。その後、アルトーの後を追いル・クレジオがメキシコに調査に行っています。ポトラッチ、タラフマラ、などこのごろよく聞く単語もこのあたりから来ているのでしょう。そして激しく身体を追い求めた舞踏がアルトーにただならぬ興味を示すのも当然でしょう。