韓国国楽雑誌「Lara」で特集されました

Lara

 

韓国国楽雑誌「Lara」で特集されました。

 

1ページまるまる写真だったり、ふんだんなカラーページで9ページにおよんでいます。このような扱いはかつてありませんな。日本の邦楽ジャーナル誌からの紹介でメールインタビューを受けました。基本的な質問が多かったので、丁寧に答えようとすると字数をかなり使ってしまいます。また、翻訳のことを考えてわかりやすい文体を目指しましたのでそれでも字数が増えてしまいました。その内、どの位がこのページに反映しているか不明ですが、ともかくありがたいことです。

 

雑誌編集長からの許可がでましたので、原稿を載せます。

 

ご興味のある方、どうぞご来場をご検討下さいませ。まだ手元に良席有りマス。ご連絡くださいますようお願いします

 

8月8日 ユーラシアンエコーズ 2章 四谷区民ホール(丸ノ内線 新宿御苑前 徒歩3分。)

18:30開場、19:00開演 21:00終演予定

元一(ピリ・打楽器)

姜垠一(ヘーグム)

許胤晶(コムンゴ・アジェン)

南貞鎬(ダンス)

沢井一恵(17絃)

螺鈿隊(市川慎・梶ヶ野亜生・山野安珠美・小林真由子)

齋藤徹(コントラバス)

ジャン・サスポータス(ダンス)

 

 

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1。齋藤徹さん、自己紹介をお願いします。

 

齋藤徹(さいとうてつ)コントラバス演奏・作曲 http://travessiart.com

1955年東京生まれ。舞踊・演劇・美術・映像・詩・書・邦楽・雅楽・能楽・西洋クラシック音楽・現代音楽・タンゴ・ジャズ・ヨーロッパ即興・韓国の文化・アジアのシャーマニズム様々なジャンルと積極的に交流。ヨーロッパ、アジア、南北アメリカで毎年演奏。

 

アヴィニオン、リッチモンド、ハワイ、ロチェスターなどでのコントラバスの国際フェスティバルに数多く参加。シンガポールサブステーション、ソウル中央日報社ホールでの「ユーラシアンエコーズ」、福岡アジア美術館オープニング・川崎市岡本太郎美術館・座高円寺での「オンバク・ヒタム」でアジア、ヨーロッパを繋ぐ道および、黒潮の流れの文化圏を辿るパフォーマンスを実践。

 

2001年~2012年上智大学外国語学部非常勤講師。人と人、場所と場所、時と時を繋げる自主レーベルTravessia(橋渡し)主宰。ヨーロッパ(フランス・ベルギー・スイス)、アジア(韓国・ラオス・タイ)、アメリカ(本土・ハワイ)ツアー、アメリカ、フランス、イスラエル、韓国、日本でCD製作多数。NHK「即興」番組、神奈川フィル委嘱作品、障がい者とのワークショップ・コラボレーションなど活動は多岐にわたる。

 

韓国との関係:

大学生の時、韓国語を習う。

1990年より巫楽・国楽・農楽と共演。

中央日報社ホールでユーラシアンエコーズジャズ・国楽コンサート

「芸術の殿堂」オープニングイヴェント 南貞鎬舞踊団の音楽を担当

 

6枚の韓国制作CDを録音

神命(金石出・安淑善・李光寿・齋藤徹)ソウル音盤 cantabile SRCD-1088

ユーラシアン弦打エコーズ(金石出・安淑善・李光寿・李太白・齋藤徹・沢井一恵・板橋文夫)サムソン NICES SCP-003PSS

ユーラシアン弦打エコーズ2(金石出・安淑善・李光寿・李太白・ウオンジャンヒョン・チボラゴ・齋藤徹・沢井一恵・板橋文夫)サムソンNICES SCO-070CSS

無翼鳥(金石出・金星娥・シンサンナム・李太白・ 鄭喆祺・ 金正熙・齋藤徹・沢井一恵・板橋文夫)サムソンNICES SCO-049CSS

サルプリ(金石出・朴秉千・ 齋藤徹・李太白・チョウゴンレイ・キムバンヒョン他)ソウル音盤cantabile SRCD-1161

弦打(金石出・ 鄭喆祺・金正熙・金星娥・金明大・齋藤徹・李太白・鄭喆祺)ソウル音盤cantable SRCD-1213

 

日本制作CD

ストーンアウト(金石出氏に捧げた作品)OMBA-002CD

ペイガンヒム( 鄭喆祺 参加)JAB-12

月の壺(李太白・金星娥参加)MD-004

 

ユーラシアン弦打エコーズコンサートを3日間開催1992年(元一・姜垠一・許胤晶・金正国氏参加)

愛知芸術文化センターでストーンアウトを韓国人ダンサーと演奏

福岡アジア美術館オープニングコンサートでチョンチュルギ氏を招待

シンガポール・サブステーションでのコンサートに 鄭喆祺・ 金正熙を招聘

神奈川フィルハーモニー管弦楽団と 齋藤徹・沢井一恵で ストーンアウト演奏 2001年・2003年

金大煥を日本に招待

姜泰煥と共演

鄭喆祺を招待

南貞鎬と共演

 

アメリカ「クロスサウンド」現代音楽フェスティバルで、韓国芸術総合学校 学長イ・ゴニョン氏作曲作品を初演

「パ・デ・クアトロ」(南貞鎬・元一・齋藤徹・ジャンサスポータス)でソウル「MODAFE」、アヴィニオン(フランス)「冬のダンスフェス」に参加

韓国芸術総合学校 尹同求教授の旧ソウル駅でのイヴェントに参加(2012年)

辛恩珠氏の招待で「共感」出演(釜山)2012年

 

 

 

2。アルバム “Salp’uli ‘作業に参加したときの様々な姿を一言お願いします。

 

珍島訪問、金大禮氏のシッキムクッを見学した後、録音。さらに、ソウルへ戻り珍島出身の朴秉千氏の録音に参加したものです。朴秉千氏の大きな存在がすべての録音を深化させていました。韓国伝統音楽に未熟な私をも大きく巻き込んですばらしい音楽にしていたのは見事と言うしか有りません。

 

「サルプリ」および「神命」(ソウル音盤 cantabile SRCD-1088)の録音の時にも痛切に感じたのは、伝統の奥深さが未熟な私を大きく巻き込んだことでした。「自己表現」などは最初から超えていました。演奏家の人生経験の深さは圧倒的で、音楽をやっている理由も明らかでした。振り返って自分を見ると彼らに比べて「人生の授業料が足りない」「音楽をやる理由が希薄」でした。しかし、それは私を落ち込ませるものではなく、かえって、人間の行為としての音楽をやり続ける勇気を与えてくれました。

 

 

当時の私の音楽活動は、音楽を和音・メロディ・リズムなどの「要素」に分解して、それらをうまく組み合わせることで「効果」を求める傾向がありました。一方、韓国の伝統音楽では、ほんの2小節単位の長短(リズム)でもすべて「意味」があり、クッコリ、オンモリ、フルリムなどすべて使用するTPOが決まっています。適当に要素を組み合わせて音楽が出来るはずはありません。

 

音楽は「効果」ではなく、あくまで人間の行為として、そして音楽は、本来「捧げ物」として存在することを舞台で、録音スタジオで、クッパンで教えてもらいました。

 

 

3。 1992年7月17日の公演をする時の様々な姿を一言お願いします。

 

西洋楽器を日本という東洋の島国で演奏している「自分とは誰?」という疑問を音楽で考えようと思いました。日本の伝統音楽を知ろうと「邦楽」との関係を求め、そこで箏曲の沢井一恵さんに出会い、多くのインスピレーションと友人を得ました。そしてさらに古い「雅楽」の世界にも足を踏み入れました。

 

そしてそのさらに先にはアジアが拡がっていることに気がつきました。韓国の優れた音楽家を呼び、現代音楽・ジャズ・邦楽・雅楽の混成オーケストラに韓国の国楽と巫楽(元一・姜垠一・許胤晶・金正国氏)を出会わせる試みでした。韓国の伝統音楽の力を聴衆と共に分かち合うことが出来ました。金石出さんもゲストで出演するというハプニングもありました。2日目3日目は小さな会場だったので、聴衆が入りきれませんでした。見えなくても良いと階段で聴いていました。

 

打ち上げでの韓国人ミュージシャンが大いに歌って,踊っていたのもよく覚えています。それにひきかえ「次は、齋藤さん、歌ってください」という要求に答えられなかったことは重く心に残りました。

 

4。齋藤徹先生はベーシストであり、作曲家として知られています。自分の音楽はどんな音楽ですか?先生が直接教えていただいてもいいです。また、他の人が言ったこともお勧めします。

そして韓国の伝統的な音楽やシャーマニズムの音楽には、どのようなきっかけで知りましたか?

 

音楽で成功しようという考えではなく、音楽を通して自分のことを追求しようとして音楽を始めました。その姿勢は今も変わっていません。「新しい」音楽もずいぶんやってきましたが、「新しさ」のための「新しさ」には全く魅力を感じません。かえって、伝統の中にこそ本当の前衛があることを知りました。(本物の)伝統の中から多くのものを学びました。その経験は韓国の伝統音楽でも同じでした。伝統とは異端(前衛)が繋がったものとも言えると思います。

 

ヨーロッパを中心にしてインプロビゼーション(即興音楽)の活動もしています。それはもはや音楽とは呼べないような「音」の根源に戻るような状態になります。しかしそれは音楽を破壊することではなく、音楽が生まれる瞬間を味わうためと思っています。

 

電気に頼ることなく、あくまでアコースティックで演奏することは変わりありません。音楽で「効果」をもとめすぎては行けません。あくまで人間の行為としてある方向が好きです。それは1人1人の記憶(経験していない記憶も含めて)と身体に基礎を置くものだと信じています。

 

2年前の東日本大震災および原発事故の衝撃は今も強くあります。原発の近くに住む妊婦・新生児たちが集団で避難しているところで演奏する機会がありました。そこで求められているのは「歌」と「踊り」でした。名人芸も効果も要りません。うちひしがれた心には本物の「歌」と「踊り」が必要であることに打たれ、30年の音楽生活で初めて歌をつくり歌手を含めたグループを作りました。

 

それは韓国の音楽では常に大事にされていることであることも思い出されます。そんなことからこの数年、私にとっての韓国がだんだん近くなってきたのかも知れません。

 

金大煥さんと二十数年前、日本でデュオセッションしたとき、たいへん大きな衝撃を受けました。翌日からいても立ってもいられず、招聘した事務所を苦心して捜し当ててました。そこから一気に関係が始まったのです。その事務所がレコーディングを企画してシャーマン達と知り合うことが出来ました。

 

 

5。齋藤徹先生が思っている音楽(または人生)の重要なことは何ですか?

 

「今」でなければできない、「ここ」でなければできない、「私」でなければできないことを音楽で表現することがとても大事だと思っています。なぜなら、「今」も「ここ」も「私」も、言ってみれば、流れているだけで、つかみどころがありません。音を出した瞬間に「いま・ここ・わたし」が現出する、という考え方が好きです。

 

特に「私」とは何か?を音で探ることが私自身にとって重要です。当たり前と思っている「私」は本来の私ではなく「知らない私」こそ大事なことを、音が教えてくれます。

 

「聴くこと」「待つこと」「信じること」、この三つはある意味で同じ事です。現代社会でこの三つは軽んじられています。(「聞く」ではなく)「聴く」ためには、立ち止まって耳をそばだてて「待つ」事が必要です。そして「待つ」ためには「信じる」ことが必要です。出し抜かれてしまうかもしれないと危惧していたら待つ事は出来ません。

 

自分と他者を「信じて」、じっくり「待って」自分の内側と他者を「聴く」ことが音楽の現場で(一般社会でも)大事なことだと信じます。そうすることによって知らない「私」が出てきて、しらない「今」しらない「ここ」が出てくるのです。

 

それは自己「表現」に汲々としていたら出来ないことです。自己表現とは、学習したことや自分の得意技を披瀝することであって、自分を超えることは決して出来ません。思い通りにやることができてもその人の容量の中に留まるしか有りません。一方、自・他を信じ、待って、聴くことができると知らない自分がでてきます。それこそが自己「実現」になるのだと思います。

 

また、「正しいということの罠」もよく考えることです。自分が「正しい」と思った瞬間から考えが硬直してしまい、待つ事も聴くことも信じることも出来なくなります。常に謙虚でありたいと思います。

 

6。 8月8日の公演を紹介お願いします。

 

前半・後半の2部に分けます。

 

第1部では金石出さんに捧げた私の曲「ストーンアウト」を演奏します。21年前にも参加してくれた元一・姜垠一・許胤晶さんの伝統楽器での演奏と南貞鎬さんのダンスがフィーチャーされます。この21年間のみなさんの成長と変化が楽しみです。もちろん私自身の変化も客観的に見えることでしょう。「ストーンアウト」ではクッコリ長短を基本に様々なリズムを使っています。日本の箏群の長短と韓国の長短とがどう共演するのかが楽しみです。1時間くらいになると思います。

 

第2部では姜泰煥さんに代表される即興音楽をいろいろな組み合わせでやってみる予定です。即興演奏では、あらかじめ準備したものを演奏することはできません。日頃何を考えているか、また、より深いところにある「記憶」が演奏からでてくるのです。「今・ここ・私」です。様々な組み合わせの中で、思ってもみない音とダンスがでてくるはずです。「記憶」の中には、経験したことのない記憶も有るのだと思います。

 

また日本・韓国という関係で「閉じて」しまわないように、ヨーロッパ人ダンサージャン・サスポータス(ピナバウシュ舞踊団のソロダンサー)に参加してもらいます。ジャンと私は共演が多く世界各国でデュオをしています。さらに元一・南貞鎬さんと4人での共演も進めていますので、まさにうってつけの人選です。

 

21年まえにユーラシアンエコーズという題名をつけたのも日本・韓国という関係にのみ捉えずにユーラシア全体におよぶ大きな文化の流れの中で日韓を捉えたいという希望がありました。今回はより具体的にユーラシア(ユーロ+アジア)全体に拡がる視野が得られると思います。

 

7。どのように準備され、何を示したいと思いますか?

 

私ひとりが、これらの優秀な11人の表現者を結ぶ点になるということになっていますので大変です。

 

そのため、まず第一に日本側全員とジャン・サスポータスとの共通意識を持つことが大事だと思います。いままでの音資料・映像資料などを全員に配布、本コンサートのホームページ(http://travessiart.com/category/eurasian-echoes-2/)にブログを書き、私の考えていることなどを伝えています。

 

真夏の一夜だけのコンサートですので、告知をしっかりして興味のある方に情報が伝わるように努力しています。

 

音楽だけでなくダンサーが2人参加していることも特筆すべきことです。音楽だけの空間で充足しないように、ダンサーがいろいろな窓を開けてくれるでしょう。南貞鎬さんもジャン・サスポータスさんも伝統的なダンス・バレーから、武術、即興まで幅広い活動範囲をお持ちですのでまさにピッタリです。

 

せっかくのネット時代で多くの出演者がFacebookを利用しているのに、私の韓国語が自由にならないのが悩ましい限りです。

 

 

 

 

5の質問でも答えましたが、音楽を考えるとき「今・ここ・私」ということを尺度にしています。しかし、今回はさらに目標を高く置き、「いま」でなければできない、「ここ」でなければできない、「わたし」でなければできない音楽を様々な出自の優れた共演者と演奏することで「いま」でも「ここ」でも「わたし」でもない音楽・ダンスが実現することを夢見ています。

 

 

8。韓国の読者にしたい言葉があればメッセージをお願いします。

 

音楽は何かを「呼ぶ」行為、ダンスは何かを「探す」行為だ、という考え方が好きです。今回ひとりひとりの演奏家が「呼ぶ」線とダンサーが「探す」線が交わって新たな局面が現れることを願っています。聴衆のみなさまの「呼び・探す」線のエネルギーが大きな助けになると思います。

 

私は韓国の伝統音楽によって大きな示唆を受けました。感謝しています。私の音楽人生での大きな転換点にもなり以後の宝物になっています。 ですから、ただ真似をすることでは感謝することにはなりません。私の全体をぶつけてみる以外ありません。

 

韓国の人々は「信じる」ことを諦めていないと感じています。音楽を、人を、愛情を、言葉を信じていると感じるのです。日本では一般的に「疑う」ことから発想する傾向があるように思います。もちろん信じるために疑うのですが、疑うことが強くなりすぎるとよくありません。

 

日本は、2年前大地震・原発事故を体験し、もっともっとポジティブに生きなければならないことに多くの人が気づき始めています。韓国の音楽・ダンスと共演すること、多くの聴衆に観て、聴いていただくことでそのきっかけになれば素晴らしいと思っています。

 

今回は東京での一回限りのコンサートですが、いつか、韓国でも出来る機会があることを願っています。

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