ユーラシアンエコーズ第2章チラシ用文章

88 写真 のコピー

 

(↑写真は資料用に私が作ったものでチラシではありません。題字は平野壮弦さん)

 

 

21年前に邦楽・雅楽・ジャズのアンサンブルに韓国の伝統音楽奏者を加えた「ユーラシアン弦打エコーズ」というコンサートを行いました。「自分は何者なのだろう」という若い問いを音楽で考えてみようという試行錯誤の末にたどり着いた一つの企画でした。新しい情報を外に求めていくのではなく自分の中の記憶の層を探ろうと言うことでもありました。

 

もちろん解決したわけではありませんが、いくつか見えたものがありました。伝統とは異端と異端が繋がったものであり、現代に直接繋がるものであること、韓国伝統音楽の持つ「健康さ」・身体性、邦楽・雅楽が持つしなやかさと過激さ、「自己表現」の弱さなどなどです。

 

それから21年。

 

さまざまな経験をへながら音楽を続けています。ヨーロッパとの関係を中心にインプロビゼーションをやっています。もう「音楽」とは言えない状態になったりもします。しかし、私の中では「うた」と「おどり」がこよなく好きで大事だという気持ちと少しも矛盾していません。

 

そこには個人のあずかりしらない「記憶」が関係しているように思います。インプロビゼーションもその記憶に働きかけるという方法とも言えます。「新しい」ことが大事なのではありません。そう考えると「インプロ」と「伝統」と「うた」と「おどり」と同じ視点から見ることが出来ます。韓国の伝統音楽奏者、ダンサーは姜泰煥さんのインプロに最大の敬意と尊敬を持っています。

 

「うた」は何かを呼ぶ行為、「おどり」は何かを探す行為だ、という説が好きです。21年後の今回は2人のダンサーが参加します。日本ー韓国の2国間で閉じることなく、より広い視野を得るためにもモロッコ生まれ、ドイツ在住のフランス人ジャン・サスポータス、伝統舞踊・バレエから出発しインプロビゼーションへ進んでいる南貞鎬さんです。いろいろな窓を開けてくれることでしょう。

 

「今・ここ・私」をキッチリ刻印することで、「今でもなく・ここでもなく・私でもない」へ至るという逆説を夢見ています。(齋藤徹)

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