ジャンさん颱風一過で一息つくと今度は8月まではアジア旋風が吹き荒れそうです。まず、17日からシンガポールへ行ってマレーの伝統音楽ガザールを演奏・録音です。演奏会は22日23日。(7月13日はジャワ舞踊、8月8日は四谷区民ホールで日韓伝統音楽合奏ユーラシアンエコーズを21年ぶり!!に再びやるのです。これは是非!)
ザイ・クーニンの父親が81歳で最後の演奏をしたいと言うことなので行くことにしました。いくつかサンプル曲を送ってもらっていますが、西洋音楽理論ではわからないことが多いのでたいへんです。タンゴにしてもブラジルにしても西洋音楽理論で分析・理解・演奏できますが、マレー音楽は違います。(フラメンコも、韓国伝統音楽も違いました。)五線譜という西洋音楽理論の象徴は上手く使えません。
どうやって共演すべきかを模索していると、自分がいかに暗黙の内に西洋音楽を基本に生きているのかに直面させられます。しかも私は西洋楽器で演奏するわけです。そういう音楽にいい加減な気持ちで触れると火傷をします。こちらが傷つくだけではありません。
マレー音楽はインド音楽とアラブ音楽の影響が強く、タブラを使ったり、ガンブースを使ったりします。しかし、独自の楽器を生み出さなかったため、幅広く発展して行きにくかったような気がします。また、港町の特徴である多文化のミックスということもあるでしょう。ザイの父はアコーディオンを弾きます。アコーディオンはインドのハルモニウムの代わりなのでしょう。その他バイオリンもいます。おそらく12音音階に入らなかったであろう音楽を西洋楽器で演奏するためか、何とも言えない不安な感じがあります。それがきっとキモなのでしょう。所謂ラテン音楽を我が物のように思っている所も不思議です。
しかもシンガポールでのマレー人は完全に被差別です。もともとマレー人の土地だったのに。そういう気分が音楽に乗らないわけはありません。さらに遡れば、山下奉文・日本軍の記憶も鮮やかに残っています。ザイの父親も「バカヤロ」という言葉を鮮烈に覚えていて、彼が言うのを聞いたことがあります。台湾の音楽家も、マレーの海賊もその言葉をとても発音よく覚えていました。
ともかくあと一週間悩んで悩んで、聴き込んでからいざトロピカルです。ザイとハリマオの話でもして盛り上がりましょう。谷豊さんはシンガポールのイスラム墓地に埋葬されているという説もあります。砂沢ビッキさんの墓を旭川のアイヌ墓地で見つけたこともありますので、時間が有ったら少し見てこようかな。