ポレポレ坐 バールちらし文章入稿

 

バール・フィリップス来日公演のチラシは12日に届く予定になっています。デザインは大橋祐介さん。ポレポレ坐徹の部屋のチラシ、CD「ソロアットORT」「うたをさがして」などのデザインで大変好評を得ています。このチラシ別の意味で見どころがあります。左と右とでバールはガンベル(Gand & Bernadel)の二種類の楽器を弾いているのです。右の楽器が現在私が弾いているガンベル(Barreと命名)左の楽器がかつて私が弾いていたガンベル(Gilbertと命名)なのです。(左の写真は横井一江さんの撮影です。チラシにキャプションを入れ忘れてしまいました。スミマセン。)私とバールで「二頭のライオン物語」として二台のガンベル・共にライオンヘッド、を交換する際に日本ツアーをしたときの撮影です。

今回バールはこの楽器ではなく、ネックが外れ、小さく梱包できる旅行用のジャン・オーレを持って来るそうです。ヨーロッパでも普通のハードケースを載せてくれない飛行機が増えてきて皆困っています。そのため、既成の楽器もネックが外れるように加工する要望が増えて半年待ちということです。ちなみにバールは1回の例外を除き、いつでも自分の楽器を運んでいます。(唯一の例外が、阪神淡路大震災のチャリティで急遽来日したときです。弦楽器工房高崎さんが好意で貸してくれました。)

さて、来日準備が進んでいます。昨日はポレポレ坐でのデュオ(徹の部屋)チラシ用の文を書きました。

 

ありがとう!バールさん

 

照れくさいけど、そのまんまの気持ちですし、さらにはホームのポレポレ坐ですので素直にそう言っちまいました。感謝することはたくさんあります。初来日の時の一言はいまでも鮮明に覚えています。こう言われました。「テツさん、何言っているの?」

 

親代々ミュージシャンな場合は別ですが、だいたい「音楽好き」「ファン」から入って、気がつくともう入り込んでしまって抜けられない、という場合が多いです。私もそうです。

 

日本で海外の音楽が好きになってしまうと、事情がさらに複雑になります。「本場」のレコード、コンサート、批評、風土、思想、歴史、言語などを取り入れる必要がでてきます。その段階では、「ファン」です。ファンだから悪いということではありません。好き、ファンということは、その音楽を聴取する能力が高いということでもあります。ただ注意しなければいけないのは、「ファン」と「演奏家」は違います。

 

20年以上前のバールさん初来日は豊住芳三郎さんの尽力で実施されました。サブさんありがとうございました。その頃の私はインプロファン、ベースファンの側面がかなり強かった。そんな私にとってバールさんは憧れでした。誕生日が一緒だとわかってルンルンでした。

 

忘れもしません。幡ヶ谷の商店街を一緒に歩いていたとき、「私などはまだまだ始めたばかりでダメですが、バールさんやヨーロッパのミュージシャンについて行けるように一生懸命がんばります。」と素直に言った時に先ほどの返事があったのです。「テツさん、何言っているの?」「演奏する時は、特にインプロの時は、皆同格でしょ?初心者かどうかなんて関係ないでしょ?」

 

目から鱗が落ちる、コトバでした。日本でできる限りのヨーロッパインプロ情報を集め、追いついていこう、というのは、正にファンの考え方なのです。この一言で私はファンと演奏家の違いに敏感になり、私は演奏家でいようと思いました。誰誰の奏法をやってみようとか、誰誰さんと演奏したいとか、の発想はキレイさっぱり無くなりました。

 

その後、ヨーロッパへ何回も呼んでもらったり、ミッシェルやニンも紹介してくれたり、ヨーロッパツアーで楽器を貸してくれたり、そればかりか楽器を交換してくれたり、いろいろなベースフェスでやっかいになったり、家族が世話になったりです。本当に御世話になっています。しかし、その発端になったのは実はその一言だったように思います。ファンのままだったら、その後の展開はまったく違うものになっていたのではと思うのであります。 ありがとう!バールさん。  (齋藤徹)

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