コントラバホでピアソラ

ピアソラ「ブーム」もようやく下火のようですので、演奏することにしました?!
食い散らかして(消費)してしまうと、「次のごちそう(獲物)はこれです。さあたんと召し上がれ」と誰か(経済)が決めるような世の中。バブル椅子に残れるのはだいたい1人。もう、そういうのやめましょ。
ピアソラの古い作品群にはいろいろな新しい工夫とひらめきがあります。ⅤーⅠという和音進行をⅡーⅤーⅠという和音進行にすることによりポピュラー音楽の和音が複雑になって行きました。「デカリシモ」というタンゴの先駆者フリオ・デ・カロに捧げた曲では、ⅡーⅤの進行を12音すべてに使っています。7thの音を最低音にした和音もずいぶん前から使っています。和音を複雑にすることによって現代人の心の機微を表すことができるようになる一方、歌や踊りから距離を取ることにもなりかねません。ジャズのチャーリー・パーカーがそうでした。
しかし、一方、世に言うピアソラビート(3・3・2)はフォルクローレの草原のミロンガを分割したもので、より古く深いアルゼンチンに根ざしていると言えるでしょう。アフリカの影響をもろに出したカンドンベもあります。その題名もずばり「yo soy negro」(私は黒人)。後期キンテートの人気曲「エスクアロ(鮫)」も実はカンドンベですし、最後期のセステートではプグリエーセのジュンバ(究極のタンゴビートと言われる)を多用していました。私が長年「ピアソラはタンゴの前衛でも異端でもなくタンゴの主流だ」と言い続けている理由です。
そしてピアソラはコントラバホを深く理解し、大事に考えていました。「キチョ」「コントラバヘアンド」「コントラバヒシモ」「革命家」はコントラバホに捧げられています。ピアソラのグループに誘われることはサッカーのアルゼンチン代表に選ばれることの様だ、と言うことを聞いたことがあります。その中でもコントラバホのキチョ・ディアスは終始ガット弦を使い続けました。
世界のポピュラー音楽の中でドラムセットを使わない稀なジャンルであるタンゴ。リズムもダイナミックスもコントラバホが担当します。ポピュラー音楽は、音量をドラムセットに合わせて全体の音量が上がっていきました。拡声が楽なエレキベースがコントラバホに取って代わりました。いまでは逆にドラムスの音量が一番小さくなってマイクをたくさん立てて拡声しています。
一番小さな音に全員が合わせるのが良いのです。その中心はコントラバホでしょう。
「ベースアンサンブル弦311」でコントラバスのラディカルなアプローチをしたメンバーがその経験を活かしてピアソラのベースアンサンブルをやります。ガット弦は続いていますが特殊奏法はありません。私たちのベースや音楽に対する意識はまったく変わりません。なぜタンゴでドラムスやエレキベースが使われない傾向にあるのか、その知恵を味わい、先に繋げたいものです。
ポスト・ピアソラを確実にしたアルゼンチン人タンゴ演奏家フェルナンド・オテロ、ディエゴ・スキッシが登場したことが再びピアソラをやろうと思ったきっかけでもあります。プグリエーゼスタイルのフェルナンド・フィエロオルケスタや日本のサルガボが評価を得ていることも関係あるかもしれません。
そんなさまざまな視点をキープしつつ楽しんで演奏しようと思います。
初回が7月4日横濱エアジン 齋藤徹+田辺和弘
2回目が8月8日東中野ポレポレ坐 齋藤徹+田辺和弘+田嶋真佐雄
田辺さんの歌もありそう。
かつて、ピアソラ研究家?の斎藤充正さんがブエノスでホセ・ブラガードさん(ピアソラの片腕として活躍したチェロ奏者)から2曲、「徹が演奏したら?」と言って楽譜を託されました。それもおいおいやらねばね。
ただ今、選曲・リハーサル中ですが、候補は
ロケベンドラ(来るべきもの)
プレパランセ(用意はいいか?)
デカリシモ
天使のタンゴ
私は黒人
チャウパリ
SVP
ブレヒト・ブレルの間で
アウセンシャス(不在)
タンゴエチュードNo.3
ブエノスアイレスの秋
コントラバヘアンド
エスクアロ
ブエノスアイレス午前零時(9重奏版)
歌二つ
やっぱり私の選曲は偏っています。はい。

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