ピッチカートを弾き続けて計10時間,ある一瞬が訪れました。「楽器の限界」。それはいままでの私のベース歴の中で何回か経験の有ることでした。そしてそれが、楽器の替え時になっていきました。
ピッチカートという一番素朴な弦の演奏方法は、多くの虚飾が排除されます。オコラ原盤の「ブルンジ」の民族音楽の録音はその原型かもしれません。沢井一恵さんも絶賛するこの音楽は、地面に穴を掘って、弦を上に張り、演奏するのです。しかもそれは呪術的な歌の伴奏です。青森のいたこは、梓弓を叩いて霊を降ろします。これはピッチカートでは無いけれど近い印象です。琴線に触れるという言葉も連想されます。
今回は、替え時と言ってももう替えることは出来ません。おまけに明日から5日連続でジョン・ブッチャーとのセッションツアーが始まります。
ふと思いました。「楽器の限界」というのは「自分の限界」の事ではないのか。
そこで、野口三千三さんに習い楽器や弦をいそいそと拭き・磨くことにしました。「かわいいかわいい鉄棒よ」と生徒と一緒に磨いて磨いてピッカピカになった鉄棒で、小学生が大車輪を連発したというエピソードがあります。楽器を拭き・磨くことで楽器の表面についた松脂やタバコの煙の分子を取り除くことで音も良くなりますし、もうすこし深く楽器とのコミュニケーションができるのでは無いか、と思います。少なくとも楽器に触れている時間は増えます。
それでは、失礼して、キュッ、キュッ、キュッ!キュッ、キュッ、キュッ!キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、キュッ!