ヨーロッパ12

郊外にあるジャックミンさんの家に泊まりました。翌朝見渡すとほとんど彫刻美術館です。ジャックミンさんは彫刻家・美術家として著名で、学校でドローイングを教えています。広大な敷地でチェーンソーを響かせているのでしょう。子供達のためにサッカーのゴールまであります。巨大な野性の鶏にはビックリ。普通に空を飛びます。大きさはほとんど大型犬くらいあります。ホント。パートナーのシグリットさんのアトリエも大きくプロジェクターも本番同様に試すことが出来ます。まあなんとうらやましいこと。日本のミュージシャンと根本が違いますね。

遅い朝食の後、ブリュッセルに移動。リシクラート(recyclartというのだからリサイクル・アート)という線路の下にあるこれまたオルタナティブなヴェニュー。今、日本で鋭意格闘中の高岡大祐さん(チューバ)もよく出演するという場所です。ボスのデリクさんはとても親切にしてくれます。なんでも,日本に行ったときに本当に親切にされたのでそのお返しもしたい、ということ。情けは人のためならず,回り回ってくるので、受け取った私もまた回さねばなりません。
今回はジャックミンさんの楽器を使い、弦も張り替えて良いと言うことなので多少楽ですが、もう今回のツアーで7台の楽器を弾きました。その度の苦労と調達、条件の違い、若い身ならいざ知らず、初期高齢者にはちょっと考えものかもしれません。
いろいろなところに、私史上、最大の顔写真のついたポスターが貼ってあり、ちょっと恥ずかしい気分。というのも第一部にレクチャーが予定されています。この10年くらいはいろいろなところで話すことも増えたので以前よりは楽ですが、講義やワークショップなどいつになってもうまく行きません。今回は英語ですし、芸術大のトランスメディア科の講義も兼ねていて、一般客はサブカルチャーもメインカルチャーも知り抜いているように見えます。しかも満席。

なんとかレクチャーも終え、ソロそしてジャンとのデュオを。レクチャー後は自分に対してのフラストレーションが溜まっていますから、ソロは初めから飛ばしました。そういう意味で、レクチャーは役に立つ?のかもしれません。また、レクチャーで偉そうなことを言うわけですから、「言うだけかよ」と言われないようにというプレッシャーもあるかも知れませんね。
駅すぐそばで線路の下にあるので何種類もの列車が3分おきくらいに通ります。演奏を進めて行くにつれだんだん何種類かの列車の音の周波数がわかってきて、合わせたり微妙にぶつけたりして楽しみました。レクチャーで「胎内音」を流したら列車の音とほとんど同じ、なんだか楽しかったです。
ジャンとのデュオもずいぶん数が重なってきました。今回これだけ一緒に時間を過ごしているので、内容は自然に変わっていきます。いろいろなことを試すことが出来、いちばん尖ったデュオになったように思います。

演奏後、和やかに各種ベルギービールを味わい、話に花が咲きます。大祐さんの話をデリクにすると「彼は全くスゴイミュージシャンだよ。チューバで尺八の音を出すんだよ」と激賞。わがことのように嬉しいこと。5月11日には横濱エアジンの国際インプロ祭・春でジャン・大祐・テツの演奏があることを自慢して告げました。
こういう所で日常的に演奏活動をしてきた大祐さんは、日本ではさぞや辛いのではないか、と危惧しますが、そんなことは杞憂に過ぎず、彼の精神的・身体的「健康さ」で乗り切っているのでしょう。それはとりもなおさず日本の状況を変えていくことと同意なのです。

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