国策として「文化」を推していく、という韓国の姿勢は、日本と全く違います。伝統文化を大切にするだけでなく、韓流ブームにもKポップブームにも多くの予算を割いていると聞きます。テレビなどのマスメディアがどれだけ人に影響を与えるかも真剣に考えているのでしょう。
私が韓国に興味を持ち言葉を多少習った30年前は、勉強するにも教材も資料も辞書さえも探していましたが、最近はどうでしょう。韓流ブームに乗って日本各地で韓国語を学ぶ人たち(おばさん達が主流?)が何千何万といます。象徴的なのは、30年前に訪韓したとき、飛行機の乗客の8~9割が男性だったのに対し、最近は逆転しています。
(ちなみに現在の私の韓国語はほとんどゼロになってしまっています。アイゴーオモニ!)
TVドラマがこのような影響を与えることを政治家・官僚が意識していたのでしょう。ゲッペルスを参考にすれば良いのです。しかし、日本では、文化予算は、予算の余ったときのもので、困ってくるとまず削られます。経済優先と言っても多くの日本の大企業のオーナーは外国人になっていますよね。おっと、この手の話は止します。
今回の主役、ユン・ドンクさんは国立芸大の美術教授です。ダンスの南さんも、元一さんも同大学の正教授。私からは比べものにならない収入を得ています。ユンさんの今回のイベントはサバティカル(自由研究のための長期有給休暇)を利用したものです。あな、うらやまし。その国立芸大の総長がイ・ゴニョンさんで、アラスカのフェスティバルでコントラバス主役の室内楽を私のために書いてくれています。彼らが日本での私の現状を知ったらビックリするでしょうね。
政策としての文化擁護はわかりますが、それだけではないはずです。
長年、中国、日本などに侵略されてきた歴史が関係している気がします。アイデンティティのための文化という要素を重視しているのでは無いでしょうか。私たちにはなかなか理解できない「恨」も絶叫も泣きもアイデンティティを保つためのものかもしれない。黒人のブルース、フラメンコ(ジプシー)のドゥエンデと似ています。
かつてよく一緒に訪韓して私の韓国録音のディレクターをしてくれた湯浅学さん(意外でしょ)がこう言っていました。「こんなにたくさん薬局があったり、医食同源で食の栄養にこだわるのも、逆に言えば自信がないからではないかな?」ちなみに現在奄美親善大使で奄美島唄のジャバラレーベルでしられる森田純一さんもスタッフだったのです。あれま。
私が韓国のシャーマンや国楽ミュージシャンを呼んで日本の邦楽、雅楽、ジャズの混成オーケストラをやったときにインタビューで沢井一恵さんが「韓国と日本は玄界灘で隣り合わせ、とは言うけど、その玄界灘がどれだけ深いことか・・・・」と言っていたのも思い出しました。
今回の場所がソウル駅の旧駅舎、日帝時代に建てられています。設計者はドイツ人と日本人だそうです。たまたまでしょうが、今回外国人ゲストは日本人の私とドイツ人ダンサーのハンナとヘレナ。天皇とヒットラーが後ろにいます。近くて遠い国とか言ってばかりでなく、草の根交流をひとつひとつやっていくことしかないのでしょう。