このごろ

いろいろやっています。DVDは映像が出来上がりました。メンバーに発送して、OKを待ちます。October Road’11のチラシもタタキができて、主催者・ゲストに送って確認を待っています。送った先が29カ所ということになっています。フーッ。
というのも、自分で確認することに年々自信がなくなっていることもあるし、世の中にでるにあたって大変慎重な方もいらっしゃる。尊重せねばなりません。
ジャンが来日というか、帰国というか、やってきました。喜多直毅さんのブッパタール訪問の際、入れ違いで会えませんでした。しかし直毅さんが良い演奏ができ、良い関係ができたことを聞いて本当に喜んでいました。浸水の森、宮沢賢治、うたをさがして、と立て続けに共演し、二人は深く理解し合っています。
October Road’11のホームページも少しずつ更新。コラージュで作った写真に一人入っていなかったというポカをしてしまい今修正をし、ゲスト紹介を私から5人分アップしたところです。
「DVD解説はご自分のことをちゃんと書いてみては?」と小林裕児さんにアドバイスいただいたので、トライしました。少し長くなりましたが少しずつアップします。
今日は、「私とコントラバス その①」
1: 民族音楽楽器Ethnic Music instrument としてのコントラバス
( 昔は良かったね-Things ain’t what they used to be)
リッチモンドでのISBコンヴェンションでのこと。バール・フィリップスさんにテッポ・ハウタ・アホ(Teppo Hauta-Aho )さんを紹介してもらっいました。「私は今、ガット弦に夢中なんですよ。」と言うと、「おまえは熱でもあるのか?」とおでこを触られてしまいました。多くのベース奏者の先達がガット弦からスティール弦になった時の喜びを話してくれました。音程は取りやすいし、音は大きいし、音の輪郭はハッキリしているし、緩まないし、手入れは楽だし、なにより安いし、夜ネズミにかじられないしね、などなどたくさんの理由を聞きます。しかし私はスティール弦からガット弦に代えたのです。
弓はジャーマン弓からフレンチ弓に代え、テールワイヤーはスティールからガットにし、エンドピンは金属から木に代えました。弓は、さらに時代を遡りオープンフロッシュになり、オケピット用の短いものになって今に至っています。歴史を遡っているようです。弓のフレンチ持ち、ジャーマン持ちを曲によって代える私の演奏を見ていたグルンベルジェさんがジャーマン・フレンチどちらでも可能な形状のものを作ってくれました。
スティール弦から、まず金属巻のガット弦(オイドクサやオリーブ)になり、次にG線とD線はプレーンガットになりました。G線とD線はイタリアのTORO弦(これは羊の腸)A線とE線はアメリカのGamut弦に特注した極太弦(牛の腸)。(tetsu modelとして製品化されています。日本人の名前のスペルに慣れていないのでしょう、Testu Modelになっていますが・・・・)
同じ考えの仲間がいたのではなく、たった一人で自分の音の好みに従って行ったら約20年の間でごく自然にそういう風になってしまったのです。オカシイくらいに逆行するその原因は?この楽器に対する基本的な考え方の違いなのかと思うようになりました。
普通、チェロの最低音とコントラバスの最低音は6度しか違いません。なのにこの大きさの違いはなぜでしょう?それは「倍音」だと考えます。豊かで複雑な倍音を生むためには、長さと太さが必要です。複雑な倍音は時に雑音成分と捉えられ、排除されますが、私はそれが好きなのですね。いや、必要なのです。
現代音楽の演奏を時々頼まれますが、ほとんどの作曲家は、スティール弦に変えて欲しいと言います。音程が、はっきりせず、もやっとしていて気持ち悪いし、イメージしていた倍音構成と違いすぎると言います。
天然素材の腸の材質は均一ではありえません。雑味を含む複雑な倍音がでます。そして、そういう弦をあまり強く張らず、弓は強く当てない方が良いのです。テールピースはごく軽いものにし、テールガットをエンドピンに巻かないようにし、松脂は粒子の細かいものを好むようになりました。
輪郭のハッキリした倍音の少ない音は、遠くまで届き、大きな会場でメロディを弾くのに適しています。ソロチューニングの弦はより細く、よりピンと張ります。逆にガットの太い弦をゆったり張り音を出すと共演楽器の倍音を巻き込んで大きく豊かな倍音帯を作り出すのだと思います。
どちらが優れた方法だと言うつもりは全くありません。ただ私の好みを言っているのです。
羊や牛の腸をよじって弦を作り、馬の尻尾に松の脂をつけて音を出すというのがこの楽器の原型でしょう。私はその方向に向いているようです。この楽器を「民族楽器」のように捉える方向が私の指向なのでしょう。21世紀の東京の民族音楽を奏でる楽器。
若い時によく練習したドラゴネッティの6つのワルツ集(バートラム・ツレッキー編)の表紙に、ボートのオールの様なものに弦を一弦だけ張って弾いている絵があります。人工ハーモニックスを弾いているように見えます。これがコントラバスの遠い祖先だとすると、もともと倍音楽器だったのでしょう。
古い楽譜に、コントラバスの弦に紙を挟んで馬が走るような雑音を出すという指示があると読んだことがあります。「倍音」と「雑音」この2つこそ、私にとってのコントラバスなのです。

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