即興に関するよしなしごと(13)

前回の補足から。
フランスの状況を語るのに、アソシアシオン(アソシエーション)のことを書いておかないわけにはいかないでしょう。古い言葉で言うと「結社」の自由が尊ばれていて、非営利団体として数十万あるとも言われています。王政に対するものとしての意味さえあったそうで、歴史的に確立・尊重されているわけです。2人以上の市民がいれば作ることが出来、地域密着型のサービスを行います。もちろん音楽サークルもあれば、美術サークルもあるわけです。

それぞれのアソシアシオンが公に申請書を出して、予算をもらい、活動する。私のソロツアーでは、各地のアソシアシオンを回ったことがあります。ミッシェルが努力して各地に連絡を取り、年に何回かのライブ予算を振り当ててもらったのです。そんな事情もあるために、ブッキングは早くなければダメです。1年先のことなど当たり前です。

4~5人の音楽愛好家がやっているグループもあれば、マルセイユのGRIMは、映像学校もあり、印刷所も,宿泊所もあります。大きなフェスティバルだってそうです。私たち日本人にとってちょっと驚くのは、みんなで一緒に飲み食いすることをとても大事にしていることです。大きいところではレストランを併設しているし、小さいところは食材・料理も持ち寄り、演奏の前後に演奏家とスタッフがみんなで食事をすることをマストとしているようです。

食を大事にすることは生活の基本です。時間を掛けずに、簡単に済ませてしまうことで失われる多くのコミュニケーション。近所にある24時間コンビニでおにぎりとお茶を買ってきて楽屋でボソボソ一人で食べる、これは食事ではなく、食料摂取です。素材を作る人、運ぶ人、料理する人、給仕する人、一緒に食事をする人、との会話で内容のあることを言う、面白い話をすることは大事ですね。テレビで誤魔化してはモッタイナイ。

前回紹介したLa Fanfare de la Touffeでマクドナルドに乱入してブラスを鳴らし営業妨害をする、というのもミッシェル達のファーストフードに対する意思表示なのです。小学校に、三つ星シェフが来て、一流の食事をする時間があるとか、癌病棟にワインリストがあるとか、わが国とは違いますね。

レストランで30ユーロ使うことには抵抗がないようですが、例えば、ワークショップの受講料が30ユーロだったら、誰も来ないでしょう。

即興演奏だって、人間の行為ですので、食事と関わる側面だってあるのです。美味しい物好きの演奏家の方が、栄養補助スナックを食べている人より、豊かな音が出そうですよね。

前に書いたロデスでの詩のフェスティバルの時、地元のお金持ちが、出演者、聴衆全員を自宅に招待した食事会がありました。200人はいたでしょう。

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