小林さんが今年一緒に関係した多くの人に声をかけたためか、たいへん豪華な客席でした。しかも、あれ以上のお客様が来たらパニックというギリギリのところで奇跡的にうまくまとまっていました。1月の虎イベントでのチョウ・ソンハさんは人気男優として国内外で大忙し、3月の九つ井、、10月のトラ・ゾウでの女優・内田慈さんはただいまパルコのCMで唐十郎と出ているし、4月のミモザでの笠松環さんや6月ブパタルで人気をさらった矢萩竜太郎くんがニコニコしているし、9月のギャラリー椿での上村なおかさんはアンコールで飛び入りするし、彦根の西覚寺から高原さんがいらっしゃったので急遽、「西覚寺」も演奏に取り入れました。
今年になってよく顔を合わせるようになった人たちも何人も、そしてずっと応援してくださる方ももちろん。少しずつ顔ぶれが変わりつつあるのは、生きている証拠でしょう。
初演の時は1時間位と言うことでしたが、今日は2セット組めるので、それぞれ1時間弱でゆっくりできました。1番大きく変わったのが「夜」と「対話」です。「夜」では、見え隠れしていたバロック風の和音進行を表に出して、それと分かるようにして演奏しました。カフェ・ズミでの直毅さんとのデュオ、キッドでの工藤さんとのデュオの時に演奏したリュリやマレが、身体の中に住み着いているようで、21世紀のアジアの片隅に興味深げに顔を出してきたという感じ。
「対話」は、テクニックを使わないと言う方法を試しました。「美術でも音楽でも、あらゆるテクニックは最後には、人智を越え匿名をめざし、自然に帰るように願っている気がします。」とプログラムにも書きました。直毅さんは、ともかくこのパートのためにかなりの時間と頭を使っているようでした。会場入りしてからも、それにかかりっきりの様子。それを見た芳明さんは「先輩、あまり練習しちゃ、いけないんじゃない?」音大の先輩・後輩の二人の会話には、部外者が入れないいろいろなダブルミーニングがあるようです。
その芳明さんは、アコーディオンを逆さまに(右手側と左手側を逆に)するは、ジャバラを重力に任せてベローっと音を出すは、極めつきは、寝転がって足でジャバラを開閉。それはほとんどジムで体操しているよう。「いや~、たくさん発見があってたのしかった。」との弁。
直毅さんは、バイオリン・チェロの魂柱用の木材を何本も用意していろいろな音を出すは、弓を操り人形のように糸で細工して揺らし、偶然弦に触れるようにして音を出すは、私と同じように正座してプリペアードしたり。二人正座していると、自然に丁寧なお辞儀をしてしまったりでした。
プログラム最後は今年最大のヒット曲?ハバネラで楽しく終了。3月の九つ井では、鶴と蕎麦、10月トラ・ゾウでは、それぞれ・ポレポレ、11月の披露宴では、新郎・新婦の名前を織り込んで歌われました。裕児さんも全てに関わっていたので、これしかない。
アンコールの上村なおかさんのダンスは、本当に絵の中から出てきたようで、楽しい一幕でした。最後の方で、エル・チョクロを少し弾くと、バイオリンとアコーディオンがそれぞれ、わざと違う調性で合わせてくるので、笑ってしまいます。
裕児さんの用意したワイン・ビール・つまみで残った人が歓談。いろいろな繋がりが曼荼羅のように絡み合っていくようです。これこそが「徹の部屋」の目的ですので大変嬉しかった。心地よい疲れでした。