世俗を離れたようなチャペルでもグローバリゼーションは進んでいる。まず、バールが迎えに来てくれた時の車が、今まで使ってきたものと違う。「これは、ジャン・オーレさんから譲り受けたんだ」と言う。ジャン・オーレさんは非常に優秀なコントラバス製作者、バールもブルーノ・シュヴィオンも、チャーリー・ヘイデンも、ガーネット女史、クロード・チャミチャンも使っている。クロードさんなどは、ガン&ベルナーデル(私が今使用している)を売って、ジャン・オーレを買った。また、最近の飛行機事情を考慮して、ネックを外して専用ハードケースに入れる装置をあみ出した。これで、オーバーサイズ問題はクリアできる。最近、沢井一恵さんは17絃をカナダに持って行くのに、某航空会社は絶対に乗せないということで、出発15分前に航空会社を変更したということ。あなおそろしや。
日本が車を売るのに政府と一緒になって減税対策を続けているのと同じ、いや、もっと
過激な政策をサルコジ政権は取っているようだ。古い車は潰す、というのだ。新しい大きな車が必要になったジャン・オーレさんは、それまで使っていた愛車が潰されるのがイヤで引き取り手を探していて、バールがそれを引き取った。
バール宅に着く直前にすれ違ったのが、郵便配達人のジョセリンさん。彼女がこの地域の郵便物配送を引き受けている。一回り回る最後がサンフィロメン教会なので、ここで、バールや奥さんと話しをしたり、タバコを一服する習慣になっている。野菜の収穫の季節になると、配達先から野菜をたくさんもらってきてバール宅にも置いていくという。彼女の仕事は配達ばかりでなく、地域の人々をよく知っているために、各家のヘルパーの役割もしている。それをサルコジ政権は小泉政権と同じように郵政民営化をすぐに実施しようとしていると言う。
そして、テレビ。こちらも同じくデジタル化がもうすぐ。日本とちょっと違うのは、今までのテレビでも、アダプターを使えば見ることができることもみんな知っていると言うことだ。日本では、「見ることができません」キャンペーン。だから買いなさい。ということしか目にしない、耳にしない。当然日本でもアダプターを使えば、新品を買う必要はないのだろう。
ことほどさように、車・郵政・デジタルテレビ、など同じ問題が世界中を覆っているのだろう。大きな大きな力が一気に儲けようという風にしか見えない、そこには、国境もなく、民族もなく、ただ拝金宗教があるだけ。
グローバリゼーションに対抗するのは、「賢いオトナ」になることだが、世の中が賢いオトナだらけになると、消費が落ち込むのは明らか。だって必要以上に買わないから。必要以上に買う、買わせる、消費欲・物欲を煽る、古いものを修理せずに捨てさせる、それしか世の中が潤う方法はない、という神話に犯されている。
良い音を出そう。