無事に帰ってきたとして、直後の予定はこんな感じです。
7月3日(土)planB ORBIT 今井和雄とのデュオ
「ORBIT ZERO」発売記念!!!
ホームページの表紙から、トラヴェシア宛に注文メールを受け付けます。
1枚1500円です。郵送料・振り込み料はこちらで負担します。
枚数、送付先住所をお教えください。
CD到着後なるべく1週間以内に、同封する郵便振替用紙でお振り込みください。
7月10日(土)ポレポレ坐 「徹の部屋vol.8」
タイトル「舜」
小鼓奏者・久田舜一郎さんを迎えて
「伝統」とは「現代」のこと?
久田舜一郎(小鼓)http://www.geocities.jp/syougetukai/sub1-1-hisada.htm
能楽 大倉流小鼓方 1944年生まれ。大倉流十五世宗家、大倉長十郎師に師事 1986年 重要無形文化財総合指定 認定 日本能楽会会員、大阪能楽養成会 講師。第五回日本伝統文化奨励賞 「久田舜一郎プロデュース伝統芸能」シリーズ等、各地で、能囃子の「音楽としての可能性」を追求した企画、公演を続けている。
久田さんとの出会いは阪神淡路大震災の支援コンサート。いろいろな国籍のベーシスト群の前に久田さんがいた。気合いの入った鼓と声にビックリする。それに対してさかんに反応するベーシスト達。「そこじゃないよ」「もっと待たなくちゃ」などと思っているうちに、私はほとんど音を出せず演奏は終わってしまった。翌日、地震で崩れかかったビルで久田さんの演奏があり、昨日の衝撃と疑問をぶつけに出かけ、共演させてもらった。
その衝撃はいまだに鮮やかだ。私の爪は裂け血が飛んだ。しかし、その何十倍もの「もの狂い」の世界が展開されていた。なぜこんなに揺さぶられるのだろう?というワクワクした気持ちを抑えられなかった。「哲学的に、思想的に深いのでしょう?」と素人っぽく聞くと「いやいや、『型』をやっているだけですよ」と軽くいなされる。その言葉がなんとかっこよかったことか。能の演目には必ず「死」を含む、ということも興味が尽きない。
以後、何かと理由を付けて、お誘いした。気軽にお引き受けいただいていることはなんと幸福なことか。演劇公演では、役者達が吹っ飛び、ダンス公演ではダンサーが凍り付いた。フランス・スイスに同行していただいた時のこと。フェスティバルのプログラム終演後、深夜、有志によるセッションがあった。紋付き袴からアロハシャツに着替えた久田さんが月に向かって一声吠えた。アフリカ・ブルキナファソから来た民族音楽家たちがその瞬間に、彼を司祭とあがめ、シャーマニックなセッションが始まった。パリのIRCAM(ピエール・ブーレーズの作った現代音楽の牙城)からきた演奏家、ヨーロッパの腕っこきインプロバイザーなどが徐々に加わり、壮大な祝祭空間が出現した。私は、彼を紹介できて誇らしいぜ、と言う気持ちだったが、それもすぐに消え、楽器を抱えてその場に居ることの至福を味わっていた。後に、フェスティバルのピークだったという新聞評がでた。
「道成寺」公演は東京・名古屋で二回拝見させていただいた。シテとの乱調子のすさまじいこと。一瞬たりともシテ方から目を離さじと、椅子を支える助手一人、鼓の皮を湿らせる助手一人を配し、最高度の緊張感を保った二人の丁々発止。これこそが本物の「即興」で最高の舞台だと直感。外国の先進文化ではなく、日本の伝統にこのような即興演奏があり、それを普通に能楽堂でやっている、という衝撃は忘れられない。そして、何より嬉しいのは、私たちとやっている即興演奏が、能の本舞台で役に立っている、と言ってくださることだ。
ポレポレ坐での本公演の直前にフランスとドイツで共演してきます。各地でいろいろな波紋・波乱を起こしてくるはずです。そんな土産話をお聞かせできることを楽しみにしています。また、能のことを易しくお話願えたら、とも考えていますし、久田さんの気さくで、思いっきりお茶目な面もお見せできればなあ、と思っています。
齋藤徹