いやぁ、実に楽しいパフォーマンスでした。
決めごとはほとんどありませんが、ずっと共同生活をしているので、すべてがリハーサルになっているわけです。好きな音楽・本・映画、やってみたいこと、最近思っていること、などなどの会話や日常の取るに足らないようなことが大事なリハーサルになっています。
ユニクロで買った3種類のTシャツを着替えるという構成、全体で70分くらい、ということだけは了解しています。始まってすぐに、1番ムズカシイ課題をやってしまうことが好きだ、という会話を楽屋で話していたので、ふんふん、と始まりました。
今の彼にとっての課題の一つは「声」です。ヴォイストレーニングはしっかりしてあるので、普段からちゃんと胸を共鳴させて良い声を出しているのですが、それを踊りながら自然にでるようにしたい、ということ。
スペース・フーのゆとりのある空間、木の香り、自然な音響はとても助けになります。2番目のTシャツの場面では、ちょっと儀式的な場になりました。彼の生まれ故郷モロッコ・カサブランカのグナワ音楽や、韓国のシャーマン音楽などを意識したものです。
三部では、小林裕児さんのボートがまたまた大活躍。「巡り会う朝」でマドレーヌ嬢がうらぎったマラン・マレに演奏をさせた「夢見る人」を演奏したシーンでは、黒い箱をどんどん登っていったジャンさん。バロックのガンバ風のアルペジオのところでは、力の限りグルグルと走り回ったジャンさん。「階段の上には、たくさんの友人がいます。ピナさん、ペーター・コバルトさん・・・・」
彼の存在からにじみ出てくるポジティブさゆえか、哀しいまま終わらせない雰囲気になり、「暗いはしけ」を演奏。この曲の持つ大きな海のリズムにあわせて、ジャンはボートをパートナーにダンスをしている。
田中泯さんとのデュオの時とほとんど同じ楽器群と手法だったのですが、全く違う音楽になりました。否定の末の肯定を思う人と、肯定してしまう人の違いか、という話題が演奏後、小林裕児夫妻と出ました。大田省吾さんの話もでました。じっくりゆっくり考えて良いトピックだと思います。
4月のポレポレ坐、そして「いずるば」でのワークショップで、ふたたび、みたび、感じてみることが出来ると思うと楽しみがふくらみます。みなさまも是非。