秋です

いろいろなことが起こって、納得できなかったり、諦めたり、羨ましかったり、何だかメランコリックな(恨な?)秋の始まりで、なかなかブログ更新もすすみません。「楽しみにしているのに」とお叱りを受けたり・・・・、すみません。サルプリでも踊らねば。

音楽の世界に飛び込む人たち。クラシックに、ロックに、ジャズに、シャンソンに、タンゴに、フラメンコに、ハワイアンに、サンバに、カントリーになどなど、心揺さぶられ、収まりきらずに演奏する方に引っ張られていった人が多いはずだ。

残念ながら全部、外来音楽。自分の生まれ育った言葉ではないわけで、その折り合いをどうつけようか、を考え始めてしまった人は不幸だ。考えるヒマもなく突き進む人はラッキー、何年に一人というような天才は例外。

かつては、情報もままならず、人の行き来も交通も不便、だいたい日本全体が貧しかった。そんな中、裕福な家庭の子女が、高価なレコードを買い、楽器を買い、外国語を身につけ、本場に赴き、情報を占有した。そうでない人たちは、そのおこぼれを受けながら「必死に」あこがれを音に変えていった。

今でもその傾向が完全に無くなったわけではないだろうが、世界は変わってきている。コンピューターによるコピー文化、インターネットによるあふれる情報。二代目、三代目という人たちもいる。

ポピュラー音楽(定義は分からないが・・・)は、もともとが貧しい人たちの生死に関わる叫びだったり、祈りだったりしたわけだから、(クラシック音楽でさえ、そう言える部分もあるはずだ。)音楽自体は裕福な人たちにだけのものにはならなかった。

最近出会った二つの例。

古橋ユキ、http://furuhashi-yuki.com/、タンゴ・バイオリンを弾く。お父さんもタンゴ演奏家。音大を出て、ブエノス・アイレスで修行した。彼の地で、演奏活動を始め、ブエノスの演奏家仲間での評判はすこぶる高い。流行りのピアソラももちろん弾きこなせるが、彼女の興味はそこだけではない。音大出のバイオリニストが、「何か面白いものはないか?」とピアソラを弾くのとは根本的に違っている。ブエノスの裏道もよく知っていて、その筋のマニアKさんと怖ろしくマニアックなブエノス話をしているのを聞いたことがある。

昨日も一緒に演奏した。リハーサルからすべてを録音し、すぐさま聴く。なかなかできないことです。共演者の音にすぐ反応できるオープンさも見事でした。

松田美緒、http://www.miomatsuda.com/、ポルトガル語とスペイン語を自在にあやつる。秋田の劇団「わらび座」で生まれ育ち、劇団で歌って過ごした後、ファドで論文を書き、ファド、ブラジル音楽、ペルーのワルツ、タンゴ、などなどを言葉の支障なく歌っている。(武満徹のポップスも、浜口庫之助もレパートリー)ついこの前も一ヶ月ブラジルに滞在、カエターノとも会ったと。その前はフランスでベネズエラ人達とツアー、日本ではウーゴ・ファットルーソ、ヤヒロトモヒロとツアー、まったくかつてのニホンジンとは違っている。あの曲は?というと、すぐにどこでも歌い出す、明るい性格。秋田はラテンだ、と聞いたことがあったな。

10月15日黒田京子さんと私で一緒に演奏する。そのためのレパートリー決めのリハーサルが続いている。守備範囲が怖ろしく広いし、まだ個人的にほとんど知らないので、彼女がブラジルにいる間、多少の準備をしてみた。シコ・ブアルキの「ファド・トロピカル」とカエターノ・ベローゾの「大胆な航海者たち」これもファド、カエターノとシコのデュエットもある。チャブカ・グランダのワルツ「ニッケの花」、高場さんに教わった「イパカライの想い出」(グアラニの歌、カエターノも歌っている)、ミルトンが歌っていた「Dos Cruces 」定かではないが、フラメンコ系のようだ。

ちょっとバイアスがかかった南米の音楽という理由だ。アマリア・ロドリゲスで有名な「暗いはしけ」はもともとがブラジルの音楽で「黒い乳母」という、(これも高場さんに教わった)美緒さんはそのバージョンを録音していたから、話は早い。

言葉の支障だらけの中、ずっと聴き続けてきた私は、いろいろなことが問われてくる。すっとんきょなこともすでに指摘された。まことにありがたいことだ。15日は、ファド、ブラジル、タンゴ、美緒さんが興味を持っている「即興」!などなどとても興味深い選曲になるはずだ。

もう、「日本から世界に発信する音楽」とか「外国だ、日本だ」と言っている時代でないのかも知れないが、なかなかそこから自由になれない私がしゃがみ込んでいる。はやくどけよ!みんなのじゃまだぜ。

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