二ヶ月に一回、ポレポレ坐カフェでやっていますが、二ヶ月は本当にあっという間です。前回のコントラバストリオの公演翌日から、具体的にこの準備に入り、チラシ作り、宣伝、譜面整理、リハーサル、予約が少ない心配だのしているともう公演になっています。
盛りだくさんの内容を、四人の箏奏者が懸命に演奏してくれました。一人一人さまざまな願いで生きているなか、普段とかなり違う音楽を、2時間半やるというのは過酷なことでしょう。実際、二日分位の内容を一気にやってしまいました。
調弦のこと、その段取りを考えるだけでハイテンションにならざるを得ないと推察します。私が会場に着いたときにはもう準備万端整って、いざ、という状態でした。声のトーンも普段より高め。その上、螺鈿隊はこの週、他の録音もあったそうです。いやはやその精神的・肉体的スタミナには感服つかまつりました。
箏からは一番遠いであろう「タンゴ・エクリプス」を第一曲目に演奏。「タンゴ」になるかならないか、と言うことには一切問題にせず、この譜面から彼らが感じることを大事にしました。ゆっくりした場面は、本当に違いますね。タンゴなど「洋楽」では、ゆっくりになるだけで、ビート感などはキープされますが、邦楽のゆっくりは、1音ごとに遠くと交信するように弾いています。そこに半音階で降りていくフレーズは、全く違う響きでした。5拍子の楽章で、パートごとのポリリズムがかみ合うときは、ガメランのような単純で複雑な構造が現れるところが新発見でした。
「演奏しない」ようにというコントラバストリオの時の課題は、今回は二の次にして、箏の絃をコントラバスの弓で弾くこと、上から吊した棒がランダムにあたり音を出す奏法を使っての即興演奏から、音数を5つのみに絞った曲、リディアン旋法の曲につなげました。箏でしかできない音の空間が立ちのぼるのが見えるようでした。
休憩中もほとんど調弦に費やし、第2部オンバク・ヒタムへ。東南アジアの楽器のような響き、琉球の三線、舟唄のロール、韓国の銅鑼合奏、白鷺のテーマの最後の音からストーンアウトへ。海の長旅をしました。
次回は、コントラバストリオ+螺鈿隊+田中泯という大きな編成なので、ポレポレ坐カフェでは会場の大きさから誠に残念ながらムリ。座・高円寺に場所を移動ということになりますので、ポレポレ坐カフェでのライブは一回お休みになります。10月、12月とやることになります。
座・高円寺の情報は、以下の通り:予約は私へのメールでも受け付けます。300席ということで、少々(いや、かな~り)心配しています。何とか成功したいライフワークです。是非お誘い合わせの上、ご予約ご来場、よろしくお願いいたします。
Ombak Hitam オンバク・ヒタム
インドネシアから琉球弧を経、九州の西に別れ、韓半島に辿り、日本海側へと流れる「もう一つの黒潮文化圏」への幻視を音と踊りで祭る試み
9月16日(水)
座・高円寺2
JR 中央線 高円寺駅北口 徒歩5分 杉並区高円寺北2-1-2
予約¥3.500 当日¥4.000
18:45 開場 19:15 開演
チケット:座・高円寺チケットボックス(電話:03-3223-7300)
劇場窓口(日月祝休み)座・高円寺WEB http://za-koenji.jp/
予約:ビグトリイ bigtory@mba.ocn.ne.jp (電話:03-3419-6261)
コントラバストリオ・ヒツジ 齋藤徹・瀬尾高志・内山和重
箏カルテット・螺鈿隊 市川慎・梶ヶ野亜生・小林真由子・山野安珠美
ダンス:田中泯
地球と人間を深く傷つけ、破綻してしまった経済効率最優先の「東京中心文化圏」に対抗できるものがこの「もう一つの黒潮文化圏」にあるのではないか? 地方→東京→欧米という流れに対するオルタナティブがここに豊饒としてあるのでは? 黒潮のことをマレー語で「OMBAK HITAM」といいます。コントラバス三台・箏四台・ダンスという編成で、齋藤徹のオリジナル楽曲を演奏します。古来、箏は「竜」になぞらえられます。四匹の螺鈿の竜が、時に空に昇り、時に大波となり、コントラバスは漂う木船になり、空飛ぶ鯨になり、舞い、踏み、泳ぎ、翔るダンサーと共に人々の夢を運びます。
照明:田中あみ 音響:鳥光浩樹 協力:玉木康晃、玉木千裕、長野由利子、鶴屋弓弦堂