そして、自信を持ってリハーサル不要のライブも1年以上ぶりにplanBに帰ってきます。5/17です。
帰ってきたorbitシリーズ。今井和雄さんとの完全即興一時間。
やっと本拠地に帰ってきた感じで大変楽しみです。
あるところに、オービットの経緯について書きました。一部省略して、それを下に貼り付けます。
即興演奏に関する私の考えを示しています。
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齋藤徹・今井和雄 デュオの経緯
初めて出会ったのが北里病院、高柳昌行さんの病室でした。高柳教室を卒業した唯一の(伝説の)生徒・今井和雄というのはどういう人?とかねがね思っていました。当時私は高柳氏とデュオを継続中、高柳オーケストラ企画が持ち上がっていた頃です。しかし、それからしばらく会うこともありませんでした。
ライブハウスでの演奏を頼まれて、共演者を捜していた時、偶然、街中で会い、共演をお願いしました。初共演はめざましいもので、「共演者」に出会う喜びで「張り合う」ように弾きまくった記憶があります(横濱エアジン)。その後、Michel Doneda, Le Quan Ninhの誘いで、カナダ・フランスツアーの話があった時、迷わず今井和雄と沢井一恵を推薦し、同行してもらいました。各地で、特にミュージシャンの間で、今井和雄のギターが評判になったのはとても嬉しいことでした。
誕生日が一月しか違わないことがわかり、シャレと照れを含み、言い訳のように、合わせて100歳になるまでデュオをやってみようかと、毎月デュオを始めました(planBにて2年半継続)。「100歳の軌跡」Orbitシリーズというタイトル・完全アコースティック・完全即興・一時間・一ステージということだけ決めました。合わせて100歳を越えた時、止める理由も見あたらず、むしろ変化しつつあることを楽しみたいと「100歳の」という文字を削り続行決定。「マージナル・コンソート」では音響に徹し、「今井トリオ」ではエレキ・ギターを弾く今井のアコースティック・ギターを堪能する絶好の機会であり、自作品の演奏、他ジャンルとの場での演奏の多い私には完全即興をする貴重で大事な仕事です。
一口に即興演奏と言ってもいろいろな種類・段階があります。ジャズで一般的な和音や旋法に基づいての「アドリブ」もあるし、何も決めずに始め、演奏過程できっかけを見つけると「音楽」になっていくもの、フリージャズのような叫び、ノイズに限ったもの、音響を楽しむもの、などなど。このデュオでは、変な言い方ですが、「音楽」にしていくのを出来るだけ避けます。もちろん「音楽」が嫌いなのではありません。安易に「音楽」にしてしまわずに、立ち止まります。「音楽・音」って何なのだろう、「人間」って何なのだろう、という根本の問いを深めたいのかもしれません。音楽を本当に好きなのです、ただちょっと欲深いのです。(「音楽」や「歌」になる直前を体感したいということが、私個人としてはあります。)
即興演奏にとって共演者を選ぶことは、最も大きなプロセスだと思います。共演者の違いを楽しむ時流には乗りません。何回か、信頼できるゲストを招いたこともありました。Michel Doneda, Barre Phillips, Urs Leimgruber, Lauren Newton, Jacques Demierre, Frederic Blondy, 沢井一恵、岩下徹、小林裕児。( 即興演奏ではありませんが、2008年3〜4月のピアソラプロジェクトでは、ピアソラのタンゴをオOlivier Manouryのバンドネオンを加えたトリオで演奏、大変好評でした。)
「Orbit 1」(Michel Donedaと)「Orbit 2」(Barre,Urs,Lauren,Jacquesと)という二枚のCDが作られ、Travessiaという私の個人レーベルが誕生した動機となりました。「Orbit 2」がヨーロッパで評判になり2009年にスイスのプロジェクトに二人招待されています。デュオDVD「Orbit 0」は、2009年に発売予定です。(注:スイスのプロジェクトは延期、デュオDVD発売は未定 2009年5月現在)
代わる代わるの魅力的なコンセプトで集客するわけでもなく、中年のオヤジが二人、楽器と格闘するという演奏は、行き当たりばったりで変わりばえもなさそうですが、2年半続けていると、驚くほど変化していました。二人にとって、毎日毎日がリハーサルであり、問われ続ける日常であり、聴衆にとっても「今・ここ・私」という問いを共有することになるのだと思います。現在の日本において大変重要な作業だと信じます。