前回のペソアの言葉にメールでいくつか反応があったので、ちゃんと引用します。
「私はいかなる政治感情も、社会感情ももっていない。とはいえ、一種の非常に強い愛国的感情はある。私の祖国、それはポルトガル語だ。」
断章74番、引用もととしてベルナルド・ソアレス『不穏の書』から、となっています。ベルナルド・ソアレスとはペソアの別名。
訳者は澤田直さん、フランス専門。あとがきによると、『ただペソアを読みたいばかりにポルトガル語を独学で学んだにすぎない』と書いています。言葉に対する敏感な訳をしていると期待したいところ。(ピアソラを調べたいためにスペイン語を学び、訳書まで出している斎藤充正さんを思い出す。)
英語を学び始めた中学時代に、諸外国の名前を覚えるとき、国の名前・その国の言葉・その国の人びとの訳語に不思議な感じをもちました。国の言葉と人の言葉が一緒、国の名前は微妙に違う。
Germanがドイツ語とドイツ人を表し、Germanyが国を表す。EnglishとEnglandなどなど当たり前のように例が羅列されています。一方日本は、日本・日本語・日本人と違うのに、英語だとJapan,Japaneseと同じ法則に従うわけです。
言葉と人を同じ単語であらわす発想と、この祖国=ポルトガル語という式はどこかで繋がっている気がします。
ペソアのmensagem(メッセージ)を元に2枚のCDがブラジルで作られていて、2枚目を手に入れました。Gilberto Gil, Milton Nascimento, Elba Ramalho, Monica Salmaso, Zeca Baleiroというきら星のような歌手達。1枚目はカエターノも参加しているそうです。歌詞が知りたいものですね。日本盤はムリですか。アマリア・ロドリゲスのライブ映像「涙」はペソアの言葉で締めくくられています。「あとに残ったのは、目の前で見たという衝撃です。」ウーム、なるほど。