カネフスキー再び

一生で1つの歌が歌えれば良い、と思う。どんなに多作な人でも共感できる作家は1つの歌を歌っている。タデウシュ・カントールも数種の題目だけを一生やり続けた。ヴィダーリ・カネフスキー監督「動くな、死ね、甦れ」があまりに鮮烈だったので「ひとりで生きる」も観に行った。

9時10分からの回だけなのに、階段にも客があふれ、立ち見もでる映画鑑賞は稀だ。(同じ映画館でのソクーロフだってガラガラだった。)

人は一作だけなら傑作が書ける、それは自叙伝だ、とよく言う。カネフスキーの映画は自叙伝なのだろう。同じ主役二人が出ている。(3作目もそうらしい)舞台も彼の故郷、極東極寒のスーチャン、日本人収容所、日本の歌も前作同様でてくる。石原吉郎も香月泰男もこの中の一人だ。朝鮮人の家もあったように見えた。自叙伝は3作も作れば充分で、彼は姿を消したのだろう。

ただ違うのが、主役二人が2年確実に歳をとっていること。子供から思春期の2年は大きい。また前作が1989年、今作が1991年。まさにこの間にベルリンの壁が崩れ、ソビエト連邦も崩壊した。それをはっきり示すように、映画開始前の画面(映画会社の名前などが出るシーン)が違う。

また、音楽担当者の仕事が増えている。残念ながら私が思う「この映像が要求している音」と明らかに違った。「オレがやりたかった」と言ったらマイキーに笑われた。もっとノイジーか、いや、それを突き抜けた静寂、あるいはその静寂を引き立たせるかすかな単旋律、音楽に至らない物音が私には聞こえてくる。

ともあれ、良い映画には間違いない。きっと3作目も観に行ってしまうだろう。来年春にかけて西の方(福岡まで)は行くようだし、DVDもでる予定もあるそうだ。

注:スケジュール情報訂正があります。12/28 planB 今井和雄とのデュオの開演時間は20:00です。planBのホームページに19:00とありましたが・・・

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